トルコ首相、デモ参加者と対話表明 海外紙が分析する国民の思いとは
トルコでは全国で反政府デモが繰り広げられており、イスタンブールなどでは数万人規模にまで達したようだ。エルドアン首相は、デモ集団を「少数派の略奪者」と呼び強硬な姿勢をとってきたが、12日には、タクシム広場で抗議行動を繰り広げるグループの代表と会談することが発表された。一方、11日早朝には、タクシム広場のデモ隊を強制排除した。
海外各紙は首相の対応を報じながら、デモ活動に根付く国民の思いを分析している。
【エルドアン首相、自信の根拠】
拡大する反政府デモに対抗するため、エルドアン首相も全国をまわり演説を行ないながら、支持者たちを鼓舞しているとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。
首相は、デモ参加者らがモスクで飲酒したり、スカーフをかぶるイスラム教徒の女性を侮辱したり、といった行動を非難しながら「我慢にも限界がある」と述べていた。政権支持者と反対派の衝突を避けるためにも、会談の行方に注目が集まる。
実際、エルドアン首相の強硬な対応には海外からも批判の声が挙がっていたとウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘している。首相は、「選挙を通して民主主義を達成するべき」とデモを非難しながらも、放水車と催涙ガスにより鎮圧を図ってきた。デモの参加者からも、警察による行き過ぎた弾圧への怒りの声が多数挙がっていた。
【デモの背景には、強まるイスラム化への不満も】
エルドアン首相の強気の背景には、2002年から3期連続で選挙に勝利し、その都度、支持率を伸ばしてきた実績ゆえの自信があるとウォール・ストリート・ジャーナル紙は分析している。
2011年に行われた前回の選挙では、首相率いるAKPの支持率は50%であり、それに次ぐ共和人民党の26%を大きく引き離していた。
さらに、様々なグループが参加するデモ集団の結束の弱さも、首相が騒動を脅威と考えていない要因だという。抗議には社会主義者や共産主義者、トルコ人やクルド人、世俗主義者、環境保護主義者、同性愛主義者など異なる信念を抱く人々が首相に対する不満をぶつけている。一方で、デモ活動中も対立するグループ(トルコ人とクルド人など)による衝突が起きないよう慎重な監視も行われていたようだ。
デモ参加者に共通する主張は、独裁的な首相と、個人の自由を侵害する政策への反発だ。
フォーブス誌は、老若男女、異なる背景から集まったデモ参加者は、それぞれ個人の自由や世俗主義を訴えていると報じている。背景には、エルドアン政権によって徐々に保守的なイスラム教国家へと変貌を遂げつつある事態に対する、爆発寸前の不満があったという。
実際、就任以来、GDP成長率の改善やEU加盟交渉の開始、クルド人との和解活動など様々な成果を上げてきた首相だが、その一方で、アルコール販売の規制などイスラム教寄りの新法を成立させていた。さらに、多くのジャーナリストの投獄などメディアの弾圧も行われていたようだ。