韓国・北朝鮮の協議再開 その背景と北朝鮮の狙いとは?

 韓国と北朝鮮の代表は9日、両国軍事境界線上にある板門店(パンムンジョム)で、2国間協議を再開するための予備会談を行った。これは、北朝鮮側からの申し出に韓国が応じたものだ。
 両国はこの会談で、今月の12、13日に、韓国のソウルで大臣級の協議を行うことに合意した。議題は、開城(ケソン)工業団地の操業、観光ツアーの再開、離散家族の再会などとなるようだ。
 開城工業団地では、韓国の企業が53,000人の北朝鮮労働者を雇用していた。しかし、北朝鮮が軍事的緊張の高まりを理由に労働者を引き上げ、閉鎖を余儀なくされた。
 北朝鮮国内の観北ツアーは、金剛山特区内で2008年に北朝鮮兵が韓国人観光客を銃撃した事件発生後中止された。
 離散家族とは、1950年から3年間続いた朝鮮戦争後、南北に引き裂かれてしまった朝鮮人家族のことで、南北赤十字社により断続的に再会の機会が設けられていた。
 なお北朝鮮は7日、3月に閉鎖した韓国とのホットラインの再開も表明した。

 挑発行動を強めていた北朝鮮の、突然とも言える態度軟化の狙いはどこにあるのか。また韓国をはじめ関係国はどう対応していくのか、海外各紙が推測している。

【韓国の対応】
 今週半ばに行われる予定の大臣級協議が成功すれば、2月の就任以来「信頼の政治」を提唱してきた朴槿惠(パク・クネ)大統領にとって、北朝鮮外交に勝利したということになるだろう、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。朴大統領は常々、挑発に対しては毅然と対応するが、信頼構築と関係修復の努力も怠らないという態度を示していた。ニューヨーク・タイムズ紙も、韓国は「何事もなかったように」計画を再開することはないだろう、との大統領側近のコメントを取り上げている。
 特に核開発問題については、現在のところ、どちら側からも発言は聞かれないようだが、行き詰まりが解消されなければ、韓国側の努力は制限されるだろうと報じられている。

【米国と中国の接近】
 北朝鮮の有力な同盟国である中国は、2月に北朝鮮による3度目の核実験後、態度を硬化している。実験後、国連の制裁強化の方針に従い、いくつかの主要な中国銀行が北朝鮮との金融取引を停止した。
 習近平主席は4月に、「どの国もその地域を混乱に陥るような行為をするべきでない」と発言。これは、北朝鮮について言及したのだと広く理解されている。
 また習主席は先週末、バラク・オバマ米大統領との会談で北朝鮮問題についてより緊密な連携を図ることを話し合った、とフィナンシャル・タイムズ紙が報じている。

 ただ、今回の緊張緩和姿勢は北朝鮮のお決まりの交渉パターンであり、威嚇的な発言と挑発行動をとった後に対話の姿勢を見せ、最大限の譲歩を得るためではないかと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は懸念している。

Text by NewSphere 編集部