ドラギECB総裁の自画自賛、信じられないこれだけの理由

 欧州中央銀行(ECB)は6日の月例理事会で、経済データが「即時の行動を認めるのに足るほどではない」として、金利の現状維持や各種刺激措置の「棚上げ」を決めた。先月は、主要貸出金利を0.75%から0.5%に下げていた。
 一方でドラギECB総裁は、必要なら「さらなる行動を取る準備ができている」と述べ、マイナス預金金利、銀行への貸出増、担保ルールの緩和、資産担保証券市場の復活、低い借入コストがいつまで続くのか投資家への指針提供、といった可能性を示した。ただし総裁は、マイナス金利などは意図しない結果をもたらす可能性があると警告している。
 この発表を受けて、各国の国債利回りは上昇、ユーロも対ドルで上昇した。

【欧州経済は楽観できるのか】
 ドラギ総裁は、ユーロ圏経済が年末までに成長へ復帰すると予測している。ECBの予測値では、今年のGDPが0.6%縮小(前年は0.5%縮小)、来年は1.1%成長となっている。
 しかしウォール・ストリート・ジャーナル紙は、個人消費依存型のフランスで自動車販売が5月に急落、輸出・投資主導のドイツでも工場受注が4月に2.3%下落、米国や中国の経済も減速傾向と指摘している。
 また、ECBは2%のインフレ目標を掲げている一方、来年のインフレ率を平均1.3%と予想している。5月のインフレ率は1.4%だった。これについてドラギ総裁は、ユーロ圏にデフレの兆候はないと述べ、「インフレ率が低ければ、より多くのものが買えます」と低インフレを容認する発言をした。

【OMTへの疑問】
 また総裁は、昨年9月、信用危機を受けてECBが発表した国債無制限購入プログラム(OMT)について、「おそらく最近行われたうちで最も成功した金融政策措置」「OMTはヨーロッパの市場だけでなく、世界中の市場に安定をもたらしています」と自賛した。
 しかしOMTは、ドイツでは納税者のリスクを増やしたとして批判されており、憲法裁判所で審理にかけられる運びとなっている。フィナンシャル・タイムズ紙は、この発言が審理に先立っての擁護であると報じている。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、OMTの発表によって南欧の国債利回りは低下したが、ユーロ圏の主力である中小企業の借入コスト改善には繋がっていないと指摘する。前日発表のECBデータでは、スペインとイタリアの小企業が、ドイツの同業者よりもはるかに高いローン金利を払い続けていると示されていた。

【理事会やトロイカは同意見なのか】
 ブルームバーグは、現状維持の決定はエコノミストらの事前予測通りだと述べた。ドラギ総裁は、現状維持は理事会の「コンセンサス」だったと語ったが、反対意見も存在した模様だ。総裁は、理事会23メンバーが政策の方向性について分かれていたと言う報告は「脚色」であって、「どこの中央銀行でも見解の相違というのはあります」と述べた。
 また、国際通貨基金(IMF)が2010年ギリシャ危機の救済時の対応で「緊縮財政が経済に与えるであろう被害を過小評価していた」など誤りを認めた件に対し、ドラギ総裁は、IMFの報告を読んでいないとした。

Text by NewSphere 編集部