「世界初」武器貿易条約に67ヶ国が署名 実際の影響力は?

 通常兵器の国際取引ルールを定める武器貿易条約(ATT)の署名式が3日に行われ、日本を含む67ヶ国が署名した。
 ATTは、核兵器などの大量破壊兵器以外の通常兵器を対象に、国際的な取引を規制するもので、闇市場への流入や紛争など非人道的な使用の予防を目的とする。
 今年4月の国連総会で、賛成154ヶ国、反対3ヶ国、棄権23ヶ国の多数決で採択された。国内での手続きを終えた批准国が50ヶ国に達した時点から90日後、発効することとなっている。
 海外各紙は、米国など武器の主要貿易国らの動きや、条約に対する賛否を取りあげている。

【中露が棄権する中、米もライフル協会がネックに】
 武器の主要輸出国である米国も賛成を表明してはいたが、全米ライフル協会などからの強い反発があり、批准に必要な上院での承認の見通しがたたないため、署名には至らなかった。条約文が6ヶ国語の国連公用語への翻訳が終了した頃を目安に署名をする意向だとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
 しかしガーディアン紙は、そのタイミングを今年後半と伝えながら、同国のご都合主義な主張を取り上げている。米国は、条約が輸出入や国の安全保障、外交政策のための武器輸送の過度な妨げになってはならないと主張。さらに、国際的な武器貿易を「合法的な商業活動」と表現し、条約が発効されても、銃弾や爆薬は移転記録や国際社会への報告義務の対象にはならないと念を押しているという。

 米国以外の主要貿易国としては、輸出大国のロシアと中国が棄権しており、今後の立場は明らかでないとUSAトゥデイ紙は報じている。
 また、北朝鮮、シリア、イランは依然として反対の姿勢を崩していない。
 国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は「世界の目はこれまでになく厳しくなってきている。主要な貿易国の署名が続くことを望む」と呼びかけている。

【実行力はともかくとしても、大きな一歩】
 世界初となる国連の武器貿易条約は、武器の仲介取引業者や武器の転用なども幅広く対象としているものの、実際に発効された後の効力に関しては、どの国が参加するかによって左右されてくるだろう。
 世界の武器貿易市場は年間850億ドル(約8.5兆円)とも言われており、主要貿易国らは、利害を考えると、批准に前向きとはならないだろう。
 また、ATTは外国との貿易を規制しているものの、国内での使用についての効力はない。

 しかし、大きな一歩として期待が寄せられているのも事実だ。英国のアムネスティ・インターナショナルやオックスファムなどは、条約の発効によって、武器により多くの命が奪われている現状を変えるきっかけになり、武器被害者に希望を与えるものだとして歓迎している。

Text by NewSphere 編集部