中国企業、米国食品大手を買収 そのねらいと、米国の懸念とは?

 中国食肉大手の双匯国際は、米国の同業大手スミスフィールド・フーズを、現金47億ドルで買収することで合意した。
 スミスフィールドの株式1株当たり34ドルを支払う。28日終値に31%のプレミアム(上乗せ額)をつけた水準で、負債を含めると約70億ドルにのぼる。
 双匯とスミスフィールド両社は、今回の買収によって「中国への米国産豚肉の輸入を拡大したい」としている。
 海外各紙は、中国企業による過去最大級の米国企業の買収として、ねらいと懸念を報じた。

【中国の食品スキャンダル】
 中国では近年、上海市の川で大量の豚の死骸が見つかるなどの食品スキャンダルが相次いでいる。2年前には中国中央テレビ(CCTV)が「双匯は養豚に違法添加物を使っている」と報じていた。
 米消費者団体は中国産豚肉が米国に輸出される可能性を心配するだろうとニューヨーク・タイムズ紙は指摘。
 一方、専門家からは、「(今回の買収は)とても賢明」「(双匯は)中国消費者が米国食品安全基準に立つという信頼に投資したい」というコメントも寄せられていると、フィナンシャル・タイムズ紙は報じた。

【米国の政治的懸念】
 今回の買収案件は対米外国投資委員会(CFIUS)の審査を受ける見通しだ。
 CFIUSは主に技術や天然資源関係の買収に携わっており、食料供給チェーンは専門外だ。双匯が中国軍とつながりがあるかなどを調査するが、審査はパスするだろうとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。
 他の企業が買収に名乗りをあげる可能性はある。ただし米国の食肉産業は大手企業の寡占状態に近いため、国内の競合大手は独禁法の問題に直面するという。
 フィナンシャル・タイムズ紙は、米政府はサイバー攻撃について中国を非難しているが、中国投資への対応はのんびりしているようにみえると報じている。

 もし今回の買収が成功すれば、米国は中国にビジネスが開かれていない、というこれまでの見方が変わるだろう、という専門家の見解をウォール・ストリート・ジャーナル紙は掲載した。

Text by NewSphere 編集部