株価下落、日銀の疑念・・・アベノミクスどうなる?海外各紙が分析
安倍首相と黒田日銀総裁がタッグを組んで行う「アベノミクス」は、株価の上昇・円安につながり、上々の滑り出しを見せたと報道されてきた。
しかし先週、長期金利が値上がりし、1%に達する勢いを見せた。他の要因も相まって、23日には日経平均株価は指数が7.3%急落する事態となった。
海外各紙はこれを受け、アベノミクスの行方について多角的に報じている。
【反動が反動を呼ぶ? -株式市場の反応】
ニューヨーク・タイムズ紙は株価に着目した。先週大幅に下落した日本の株式市場だが、楽観的な見解もあるという。
菅官房長官は株価動向について、過去にも1週間で1000円を超えるような値上がりもあったとし、これまでの上昇の「調整段階」との見方を示した。加えて、冷静な対応が大事とも語った。
またエコノミストからも、たとえば市場には現在、「日経株価指数が1%下がったら売る」などという機械的なルールで資産を運用する投資家が存在することから、「売りが売りを呼ぶ」連動があったのではないかとの意見があるという。
少なくとも当面はこの動揺が続くことを認めつつ、その後は日本の景気次第で、株価が上昇に回帰するとの見解だ。
【内部分裂か? -日銀金融政策決定会合】
フィナンシャル・タイムズ紙は、26日に行われた日銀の金融政策決定会合に着目。「何人かの」理事が、日銀の金融緩和策に疑念を呈したと報じた。
それによれば、「おそらくは2名」の理事が、「2%のインフレ」を目指しながら「大量の国債を買い入れる」という日銀の施策が、そもそも矛盾を孕むものであり、市場に混乱をもたらしていると指摘したという。これら2つの施策は、景気の上昇という究極の方向性は同じくしながら、短期的には市場に相反する動きをもたらす。
ニューヨーク・タイムズ紙は、同会合にて、物価情勢の先行きについて、日銀が目指す「2年以内に2%の物価安定」の「実現は困難」との意見が出たことを紹介。日銀があくまでこの目標に固執しながら果たせなかった場合、金融政策に対する信認を毀損しかねないとの見解が述べられたと報じた。
市場の専門家からは、「(混乱から)日本国債の買い控え」が生じているとの指摘がなされている。今後、円滑にこれらの施策を進めて行くためには、日銀にはボラティリティ(変動率)を鎮める責任があるとの声が出ている模様だ。
具体策としては、月1兆円を8回投入するという現状のシステムから、1日に3000億~4000億円の国債を買い入れるような小幅のシステムに変更することや、都度2時間前に市場に通達するのではなく、FRBのように月間の詳細な買い入れスケジュールを発表すること、などが呈示されているという。
【政府に注文 -財政制度等審議会の見解】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、27日に、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が、麻生財務相に提出した報告書に注目した。
その内容は、財政健全化に向けたものだ。
まず、日銀による金融政策頼り一辺倒の景気浮揚は、結局は「国債の信用失墜と長期金利の急上昇を招く」と警告し、政府が具体的な成果をあげない限りは、「金利急騰によって金融緩和の効果を減殺させかねない」と指摘。さらに、「(真の景気改善のためには)歳出の抑制や増税を避けて通ることはできない」と述べている。
吉川洋会長は審議会終了後の会見で、「経済成長と財政再建は対立するものではない」ことを強調し、政府与党内にくすぶる追加財政出動論に、「さらなる補正を組むことは、報告書のスピリットに沿っているとは思わない」と釘を刺したという。
総じて、日本の景気が上昇気流に乗っていることを認めつつ、その実体はあくまで穏やかなもので、日銀による「空ぶかし」が反発を招いたとの市場の見解を示唆している。政府・日銀に対しては、堅実な足運びを求める機運が内外から高まっていることをうかがわせる報道となった。