どうなる北朝鮮?怒りの米韓中
北朝鮮はここ数ヶ月間、核実験やミサイルの発射実験をめぐり、各国との緊張関係を激化させてきた。
しかし最近、この膠着関係に風穴が開くかという期待感が急速に高まっていた。中国が、北朝鮮の暴走にも似た威嚇的な姿勢や核開発への傾倒に対し、懸念を表明し始めたためだ。
【高まった6ヶ国協議再開の期待】
22日、金正恩第一書記の腹心として知られる朝鮮人民軍の崔竜海総政治局長が訪中した。23、24日と連続で、習近平国家主席をはじめとする中国の高官と会談し、金第一書記の自筆の親書を手渡した。
外交懸案に対しては、これまでと打って変わて、「対話による解決」を求める意向を示したという。このことは、中国の苛立ちに対する同国の懸念と気遣いを感じさせ、各国の期待を高めたようだ。
なかでもニューヨーク・タイムズ紙は、24日に崔氏が帰国した時点での各国の思惑に注目した。金第1書記からの「親書」に、北朝鮮・中国両国の同盟は「何物にも代えがたい強い絆」で結ばれていると書かれていたことを紹介。
ただし、崔氏は対話姿勢を明らかにしつつも、6ヶ国間協議の再開については明言しなかったとも報じている。
同紙は、中国が、「米国が存在感を高める原因となっている同地域の緊張」を和らげる意図を見ていたと分析した。
一方ブルームバーグは、新華社通信が23日、「北朝鮮は中国側の忠告を受け入れ、対話を実行する意欲を見せている」と報じたことを伝えた。
【裏切られた期待】
しかし26日には、北朝鮮の国営メディアが、核兵器製造に関する同国の計画を改めて報じ、高まった期待感に一気に水が浴びせられたことを伝えている。
国営メディアは、「世界中の人々に羨まれ、敵に恐れられる軍事力と、核保有国家としての強大さ」を知らしめる国家としての決意を述べた。同時に、韓国の朴槿恵大統領に対して、誹謗中傷ともいえる個人攻撃を展開した。韓国政府はこれに対し、抗議を表明している。
【各国の立場】
こうした状況について、各紙とも、それぞれの国が抱えるジレンマと、事態の打開の困難さを報じている。
〈北朝鮮〉
アナリストらは、「対話重視発言」と「核開発続行」との、北朝鮮の矛盾する姿勢について、以下のように分析している。
つまり、北朝鮮には方針転換の意思はまったくない。ただし、中国からの、原油をはじめとする経済・政治的支援をつなぎとめることは、同国の命運を左右する命題だ。金氏からの自筆の親書や、習主席との会談に軍服ではなく人民服を着用するなどの行為には、中国の顔を立てるための努力は怠らないが、核開発の続行は譲らないとの同国の意思が透けて見えるという。
〈中国〉
近年、世界での存在感を強める狙いを顕在化させつつある中国。特に周辺各地での主権を主張するなど、「覇権」を目指す同国にとって、「ライバル」米国の、周辺地域での存在感は邪魔でしかない。
長年、北朝鮮の「恫喝政治」を見過ごしてきたとはいえ、米国が「乗り出す」ことを正当化する、最近の北朝鮮の度重なる「度の過ぎた」言動に、中国は苛立ちを深めているという。
さらに、国力の増強とともに、北朝鮮を抑える「大国」としての責任を各国から期待されていることも、中国の悩みとなっているようだ。
ただし、アナリストらは、中国が北朝鮮への「支援」を断ち切ることは考えにくいとみている。核開発をめぐる亀裂は埋めがたく、金氏自ら中国に赴いたとしても、方針転換という「手土産」なしでは歓迎されなかっただろうと報じられた。
〈アメリカ〉
アメリカは、北朝鮮の核開発やミサイル開発が、かねてよりの分析以上の精度を示していることに懸念を深めているとされる。
対話による解決を求めてはいるが、6ヶ国協議の再開には「北朝鮮の非核化」が必須だとする見解は揺るぎない模様。北朝鮮の「恫喝や威嚇」には断固屈さずとの姿勢を堅持している。
〈韓国〉
韓国は、アメリカとの緊密な関係をアピールしつつ、同様の見解を保持している。
ただし、「非核化なくして対話なし」とのアメリカとは異なり、韓国は、「開城工業団地」をめぐっての対話を呼びかけ続けている。朴槿恵大統領は、先日の訪米に続き、6月には訪中を予定している。堪能な中国語を活かしての外交で、北朝鮮問題が俎上に上げられる予定だという。
各国の非難をものともせず、核兵器開発へまい進する北朝鮮。唯一無二の「庇護者」の制止すらも聞き入れない現状を、どう打破するのか。各国の協調と外交手腕が問われている。