国連総会でシリア決議案可決 和平につながるか?

 15日、国連総会において、シリアに暫定政権の樹立を求める決議案が採択された。総会決議は、法的拘束力はないものの、国際社会の政治的な意思を示すとされる。
 海外各紙は、各国代表の主張や総会の模様を交えて、今後を占った。
 
【修正された決議の内容とは】
 今回採択された決議の草稿は、カタールが主導で用意し、アメリカなど45ヶ国以上が共同提案国となったものだ。
 当初は、アサド政権の市街地における重火器の使用、人権蹂躙を厳しく糾弾するとともに、反体制派の承認と武器支援を決定した3月のアラブ連盟の決議に添う文言が採用されていた。
 しかし、採択に至るまでに5度の修正を受け、現体制批判を基調としつつも表現が和らげられたほか、反体制派が「犯したかもしれない罪」にもわずかながら言及されたという。
 その上で、アサド政権と反体制派の代表者による「政治対話」によって、民主的な複数政党制に移行することを呼びかける内容となった。

【反対派の主張】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、シリアに関する国際決議の例に洩れず、ロシア、中国、イランが強く反発したほか、一部の中南米諸国も反対に回ったという。
 中でもロシアは、修正案ですら、あまりにも反体制派寄りでバランスを欠いたものと批判。先日米ロが合意した、6月のシリア関係国会議の計画を脅かすものだと、最後まで食い下がったという。ロシアのパンキン国連次席代表は、決議は現政権の追い落としを目的とし、反対派勢力の戦闘行為を助長するもので、「極めて有害で破壊的」と切り捨てた。
 また、シリアのジャファリ国連大使は、アラブ連盟が「テロリスト」に武器を供与するために、国際的な正当性を求めていると激しく非難したうえで「シリア危機の本当の解決は、シリア人自身によるものでなければならない」と強調した。

【賛成派の主張】
 これに対し、オバマ政権やアロー仏国連大使は、一部「テロリスト」の存在を認めつつ、国連安保理が過去3度に渡って、シリアにおける暴力の沈静化を目指し、戦争犯罪非難の決議案の採決を試みてきたことを指摘。いずれも、ロシア、中国の拒否権発動によって葬り去られてきた結果の「苦肉の策」として、今回の総会決議採択があると反論したという。

【中立国の主張】
 今回の総会決議で目立ったのは、棄権国の多さだったとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。昨年8月の同様の決議では、133ヶ国が賛成票を投じたのに比し、今回の結果は、賛成107、反対12、棄権59と、棄権国の増加が突出していた。
 この結果は、たとえ決議案が採択されたところで、暴力の沈静化や政治的解決に結びつくとは限らないという諦念を反映するものといえる。

 実際南アフリカは、6月の会合まで決議を延期するよう要請したにもかかわらず却下されたことに失望の意を表明。他にも、決議案が一部の国のみで起草されたことへの不満を述べる国も多数あるという。
 国際社会が一致団結しているとは到底いえない状況だ。

【エスカレートする暴力 和平は実現するのか?】
 アルジャジーラは、こうした話し合いが行われている最中にも、シリアではアレッポやダマスカスで激しい戦闘が続いており、暴力がエスカレートの一途をたどっていると指摘している。同紙によれば、シリア人権監視団は、シリアにおける死者数を、少なくとも9万4千人。おそらくは12万人に及ぶと見ているという(国連の推定より多い)。

 国際社会の「和平」の模索は、果たして実るのだろうか。

Text by NewSphere 編集部