北京で異例の抗議行動 その背景とは?

 北京市豊台区で8日、安徽省出身の20代女性の不審死に対して、「ちゃんとした」捜査を要求するため抗議運動が起こった。女性は5月3日、衣料卸売市場の建物から転落し、死亡しているのを発見された。公安は自殺と断定したが、遺族や同僚などは真相究明を求めた。
 10時ごろから抗議者が集まり始め、「正当性を求める」と記した横断幕を掲げ、「抗議」と叫びながら抗議運動が展開された。公安や特殊部隊兵、ヘリコプターも出動し、物々しい警備体制が敷かれ、一部でもみ合いとなって負傷者がでたとガーディアン紙は報じている。
 ただし、中国の首都はしっかりと「統制」されており、扇動者を留置するなどいつもの「手慣れた方法」で、火種が大きくならないよう対応しているとファイナンシャル・タイムズ紙は報じている。

 「現場や遺体から疑わしいものは全く見つからなかった」と発表し、続けて「捜査は続行中」であると強調する北京公安局に対して、該当者の遺族は「強姦され、殺されたことを公安は隠している」と疑っていると海外各紙は報じている。

 他方、抗議運動の参加者は100人くらいであったと北京公安局は発表しているが、ファイナンシャル・タイムズ紙が取材した匿名希望の参加者は、「10,000人にも上り、参加者の数人は負傷した」などと語っており、公安の大量配置はとんでもない事が起きているというサインだとウォール・ストリート・ジャーナル紙は論じている。

 抗議運動に参加した多くの人は地方出身者(主に安徽省)である。
 これを踏まえ、フィナンシャル・タイムズ紙は、中国の格差問題に言及。地方からの出稼ぎ労働者を「準国民」として取り扱い、医療や教育など保障されていないと指摘している。
 この運動で、都市に住む人と地方から上京してきた出稼ぎ労働者「外地人」の間に存在する社会の「ヤミ」が浮き彫りになり、地方出身者が関係する当該事件など公安当局の捜査に「格差」が存在するのではと考えられる。

 こうした行為は中国で厳しく規制されている。ただ、ファイナンシャル・タイムズ紙は、「反日運動」だけは認められ、しばしば奨励されていると皮肉っている。

Text by NewSphere 編集部