ビル崩壊事故からみえる、バングラデシュの苦悩とは

 4月24日に起きたバングラデシュでの縫製工場ビルの崩壊事故から1週間が経過。死者は400人超に達したと報じられている。依然多くの行方不明者がおり、捜索活動は難航しているという。
 海外各紙はあらゆる方面でそれぞれの苦悩や今後に注目している。

【オーナー逮捕と労働者の実態】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、逃亡していたビル所有者のラナ氏をはじめ、4人の工場経営者が逮捕され、ビルの管理体制などが取り調べられると報じた。
 そこで注目されているのは、バングラデシュの繊維工場における労働条件の過酷さである。1日10時間、週6日勤務で、月に40ドル足らずの報酬と報じられている。低い生産コストの影で、劣悪な労働条件や搾取の実態も指摘され、工場の安全対策とともに大きな課題を突きつけられていると同紙は警告している。

【遺族の怒りと企業の活動】
 ニューヨーク・タイムズ紙は、事故の犠牲者、行方不明者の遺族を取材し、彼らの怒りや悲しみを報じている。
 多くの遺族はビルの所有者に対する怒りをあらわにし、ずさんな管理体制や労働者の人権を軽視していた現状を糾弾している。

【今後の繊維業界】
 バングラデシュの輸出全体の8割を占める衣料産業は200億ドル規模で、中国に次ぐ世界第2位である。
 しかし今回の事故によって、工場の安全対策の不備や労働環境の劣悪さが浮き彫りになり、悪影響を及ぼすとウォール・ストリート・ジャーナル紙は懸念している。
 崩壊したビル「ラナ・プラザ」ではイギリスの「プリマーク(Primark)」やスペインの「マンゴー(Mango)」などの製品が製造されており、工場経営者らはこうした欧米の衣料メーカーが今回の事故を機に同国での製造から手を引いてしまうことを恐れていると報じた。同国の主力産業の縫製業界のダメージの大きさによっては国の経済力に大打撃を受けかねない状況に立たされていると報じた。
 ニューヨーク・タイムズ紙によると、同国の繊維業界の代表らは、取引のある欧米衣料メーカーの代表らと会談したという。バングラデシュ側は、安全対策の強化を約束するとともに、今後も同国での製造を続けてほしいと訴えたと報じられている。

Text by NewSphere 編集部