失業者が増え続ける西仏両国、緊縮政策の行方は?
スペインとフランスで失業率が上昇し、両国共に過去最悪の記録を更新した。
欧州連合(EU)各国は、経済回復に向けて厳しい緊縮政策をとってきたが、一部の国にとっては逆効果との声も挙がってきている。堅調な成果をみせているドイツは、長期的な安定感を達成するためには厳しい政策も必要だと訴えているが、スペインやフランスなどでは緩和の動きが出始めているようだ。
海外各紙は両国の状況について報じている。
【スペイン、過去最高の失業率】
スペイン統計局(INE)の発表によると、1−3月期には32万2000人以上が新たに職を失い、失業率は前期比1.14ポイント上昇の27.16%となった。1975年にフランコ総統が死去して民主化が始まって以来、最悪の数字となる。フィナンシャル・タイムズ紙によると、特にサービス部門、農業での失業が著しいという。また、約1700万世帯のうち、有職者がいない家庭は約190万世帯となり、前年比で18万世帯増加しているとブルームバーグ紙は報じている。
スペインにとって無理のある緊縮政策に反対し、国会前ではデモが繰り返されているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。デモ参加者の中には、長年勤務してきた職を失った人や、親が失業したため学業を続けることができなくなった学生などがいるという。
各紙によると、エコノミストらの中にはスペイン経済は底を打ったと楽観的な見解を示す向きもいるが、少なくとも年内にはその兆しは無さそうだという。一部では、年内までに失業率は28%まで上がるのでは、と予測する声もある。
悲惨な失業率を受け、政府が明らかにした新経済計画では、今年度の実質国内総生産(GDP)伸び率予想を マイナス0.5%からマイナス1.3%へ、財政赤字の対GDP比率を4.5%から6.3%へ修正。EUが定める目標達成は2年遅れるとした。また、法人税は見直される可能性があるものの、基本的には増税や歳出削減の必要はないとした。
【フランス、就職支援策の効果みえず】
フランス労働省の発表によると、3月の本土における失業者数(登録求人者数)は前月比1.2%増の322万5000人となった。23ヶ月連続の増加で、統計を開始した1996年以来、最悪の数字となったと各紙は報じている。
政府は就職支援プログラムや雇用規制の緩和などを実施しているが、効果は現れていないようだ。スペインとともに財政赤字削減目標の達成期限を延長をする見込だとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
IMFは、EUの緊縮政策は世界的な経済回復の妨げや自滅の原因になりかねないとしてその緩和を訴えている。欧州委員会も、緊縮政策が全撤回することはないがある程度の緩和は必要であることを認め始めているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。来月末までにスペインやフランスなどに対して、どの程度までの緩和を認めるかを発表する予定だ。