鳥インフルエンザ、台湾で初の患者確認 感染拡大は食い止められるのか?
24日、台湾で、中国本土外での初めてのH7N9型鳥インフルエンザの患者発生が発表された。保健当局によると、患者は53歳の台湾人男性で、中国江蘇省に滞在後、火曜に上海経由で帰国。空港で発熱、咳、鼻水などの症状を呈し、直接病院に運ばれて検査を受け、感染が確認されたという。
3月31日に、中国で初めて、新型鳥インフルエンザとして公表されて以来、のべ108人の感染者と23人の死者を出したH7N9鳥インフルエンザウィルス。各地の専門家が正体解明に取り組むなか、報告された本土外の初の患者発生は、新たな局面を意味するのか。海外各紙が改めて探った。
【疑われるヒト-ヒト感染】
専門家は今回の鳥インフルエンザについて、「家禽、あるいは家禽市場の汚染された環境」が感染源である可能性が最も高く、ヒト-ヒト感染の可能性は低いとしてきた。3月31日の公表後、上海周辺で、ほぼ連日のように確認されていた感染者が、4月6日の家禽市場の閉鎖を境に激減し、事実上、その翌週の「潜伏期」後には発生していないことを根拠とした説だ。
しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、重症と伝えられる今回発症した台湾人男性は、江蘇省滞在中に、生きた鳥や家禽への接触も、完全に火の通っていない肉や卵の摂取もなかったと報告されているという。
しかも、この患者が入った病院の関係者110人のうち3人が上部呼吸器感染の症状を見せている模様で、疾病予防管理センター(CDC)は、これらのほか、患者に接触した別の29人についても 監視を続けているとしている。
また中国でのケースも、全ての患者が家禽からの感染を確認されているわけではなく、家族内で集団発生しているケースもある。WHOの専門家は、こうしたケースが通常の家禽との接触によるものか、あるいは限定的な人同士の感染によるものかははっきりしないとしている。
【WHO専門家の警告】
WHOのインフルエンザ専門家は24日、北京での記者会見で、H7N9型ウィルスを、「人間にとってまれにみる危険なウィルス。かつて経験したもっとも致死力の高いインフルエンザウィルスだ」と形容。「他の鳥インフルエンザの変種よりも鳥からヒトへの感染が起こりやすいと思われる」と述べた。さらに、「研究者は未だ、このウィルスの理解の端緒にたどり着いたにすぎない」と警告したという。
中国とWHOの研究者は、H7N9型ウィルスの拡大とヒト-ヒト感染の可能性を解明するために、上記の中国の家庭内集団感染のケースも含めて、さらに監視と研究に力を入れるとしている。
【進まないワクチン開発】
チャイナ・デイリーは、WHOの専門家の見解を紹介した。それによると、「このウィルスに対する免疫」についてまだほとんど分かっておらず、ウィルスが変容を重ねていると思われるという。そのため現段階ではワクチンの生産は推奨されず、有効なワクチンの開発にはまだ時間がかかるとみられている。
フィナンシャル・タイムズ紙は、2003年当時、中国で発生しアジアを席巻したSARSに、台湾が大打撃を受けた過去を紹介。蘇州市には、台湾の企業が所有する工場が多数あり、月に何十万というビジネスマンや旅行者が行き来する両国の関係上、特に今回の鳥インフルエンザを警戒してきたことを伝えた。
ただし、2003年当時、外交的なパイプがほとんどなかった両国の関係上、情報の共有・協力が難航し、病気との戦いが困難を極めた当時よりも、現状は恵まれているという。
SARSの再来とならないためにも、活発な情報交換や協同による、ウィルスの解明が進むことが望まれる。