バングラデシュでビル崩壊、死傷者1,600人以上 その原因と影響とは?
バングラデシュの首都ダッカ郊外で24日、商店や縫製工場などが入った8階建てビル「ラナ・プラザ」が崩壊した。当局によると、少なくとも200名が死亡、負傷者は1,400人以上にのぼるという。
地元メディアによると、このビルでは事故の前日、建物に亀裂が確認されたため、従業員らは屋外に避難していた。低層階の商店や銀行支店はすぐに閉鎖したが、上層階の縫製工場の経営者は、従業員に出勤するよう命じたという。
バングラデシュ内相は「ビルは違法で、建物基準に違反していた」と語り、ハシナ首相は25日を国家哀悼の日とすると発表した。
海外各紙はバングラデシュのビルの安全基準の他、急成長を続ける同国の衣類産業の問題を指摘した。
【蔓延する違法ビル】
欠陥構造のビルは同国で長年問題になっている。過去10年間、同国では工場火災で700人以上の従業員が死亡している。昨年11月にはダッカ近くの縫製工場「タズレーン・ファッションズ」で同様の悲劇が起こり、112人が死亡した。
バングラデシュの労働雇用省は3月、国際的な労組などとともに衣料産業の火災安全に関する国家行動計画を採択した。計画には設備の近代化、火災・ビル安全法見直し、労働者訓練などが盛り込まれた。欧米企業も安全基準の強化を誓っていた。
【衣類産業の不透明性】
昨年11月の火災後、低価格衣料を製造する欧米有名企業による同国工場の利用増大に国際的な注目が集まり、その供給網の不透明さが問題となった。タズレーンの工場では米小売大手の「ウォルマート」と「シアーズ」の衣料を製造していた。しかし両小売業者は「知らなかった」と述べ、内密に下請けしていた製造業者を非難した。
今回も労働活動家が残骸を調査したところ、崩壊したビル内の縫製工場が、主要欧米ブランドの衣料を製造していたことを示唆するラベルや製造記録を発見したという。
【世界最低の労働賃金】
バングラデシュは中国に次ぐ世界第二の衣類輸出国である。近年安い労働力を求めて外国企業が同国に殺到しているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた。
その主な理由は中国の労働賃金が上がったことにある。中国では一部の州が最低賃金を月200ドル以上に上げた。一方、バングラデシュは世界最低の労働賃金で、縫製労働者の最低賃金は月37ドル程度だという。
また与党アワミリーグの党首であるハシナ首相は、この事故で政治的な問題に直面するとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。「ラナ・プラザ」はアワミリーグ在籍の政治家が所有しているという。