米国、イスラエルへの軍事支援に合意 その狙いは?

米国、イスラエルへの軍事支援に合意 その狙いは? ヘーゲル米国防長官は22日、イスラエルでヤアロン国防相と会談。その後の共同会見で、イスラエルに対し武器提供など軍事支援を続けると述べた。その目的は、核兵器開発を続けるイランに対する警告と見られている。あくまで最終決定はイスラエルにあるとしたものの、軍事行動は「最後のオプション」であり、当面は制裁や交渉を続けるスタンスを示した。
 またヘーゲル氏は「アメリカ・イスラエル間は非常に良好な関係」とコメント、ヤアロン国防相と共に友好的な姿勢をアピールした。ヘーゲル氏のイスラエルへの批判的な姿勢は、以前から非難されていたが、そのマイナスイメージを打ち消そうとした形だ。
 なおヘーゲル氏は今回の中東歴訪で、アラブ首長国連邦やサウジアラビアなどの友好国にも軍事支援を約束している。
 海外各紙は、具体的な交渉内容、両国の思惑、これからの課題を論じている。

【軍事支援の内容】
 今回の軍事支援は、主に空中給油可能な航空機、ミサイル、タンカー、オスプレイ(沖縄に配備されたものとは別型)などが含まれる。ただ、フィナンシャル・タイムズ紙によると、イランの地下核施設も攻撃可能とされる、最大級のバンカーバスター爆弾(外壁内部の目標に到達してから爆発するタイプの爆弾)に関しては、掲載可能な航空機がないとして、含まれなかった。それでも今回の売却について、アメリカの高官は、中東の中でも「イスラエルに前例のない制空権を与えられた」とコメントしている。
 アメリカはイスラエルに対し、今会計年度で過去最高の30億ドル以上、来年度も2億ドル以上の軍事支援を約束している。ヘーゲル氏は会見後、「サポートを続けるだけでなく、イスラエルの軍隊レベルの質を高めていきたい」と語っている。

【対イラン姿勢】
 一方、イランに対する両国の考えには、まだずれがあるようだ。現段階でイランの20%濃縮ウランの保有量は、イスラエルのネタニヤフ首相が昨年国連で示した「レッドライン」(越えてはならない一線)を下回っており、アメリカは外交交渉の余地があると見ているようだ。
 しかし、イスラエルから見るとこれはイランの作戦で、ウランの生産スピードを上げるための「時間稼ぎ」に過ぎないと危惧しているようだ。ヤアロン国防相は「まだ交渉の余地はある」、ヘーゲル氏も「最終的な判断はイスラエルに任せる」と表面上は合わせたが、一部のイスラエル高官は「イランに対する危機対策の違いは明らかだ」と述べている。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、そもそも二国間の武器売却交渉は難儀続きだったと分析する。イスラエルは以前からイランが「平和的利用の為に」開発するウランの存在を危惧しており、アメリカに武器の提供を依頼していた。ブッシュ前政権時には行われなかった強力な艦船などが今回の軍事支援に含まれており、危機感が増していると考えられる。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、イスラエルへの軍事支援を強化する代わりに、当面のイラン攻撃の可能性を下げる事により、中東に駐留する米軍へ被害が及ぶリスクの低減を狙っているのではと分析した。さらに、今年のイランの大統領選の結果次第で、交渉の余地が増えることも見込んでいる可能性も指摘した。

Text by NewSphere 編集部