ナポリターノ大統領再選 空転するイタリア国会 出口は?

ナポリターノ大統領再選 空転するイタリア国会 出口は? イタリアでは20日、ジョルジョ・ナポリターノ氏(87歳)が大統領に再選出された。イタリアの共和制政治開始以来、大統領が2期務めるのは初めてのことである。
 ナポリターノ氏は、1期目にマリオ・モンティ氏を首相に指名し、景気悪化が著しい同国の積極的な財政改革に取り組んだ。ナポリターノ氏は、5月に終了する任期後は職を辞すると表明していたが、新しい組閣が進まないことによる国政の混乱を受け、続投を承諾したようだ。
 経済破綻を一時的に免れたイタリアだが、現在の政治混乱が続けば、ふたたび危機に陥るだろうといわれている。ナポリターノ大統領の再選が混乱を収める保証はないと、海外各紙は先行きの不安を報じている。

【大統領再選出の経緯】
 今年2月に行われた選挙で、ピエル・ルイジ・ベルサーニ氏率いる中道左派の民主党は、上院で敗北し、下院で過半数を獲得するに留まった。これに対し、元コメディアンのベッペ・グリッロ氏が創設した反体制派の政党「5つ星運動」は、いきなり議席の4分の1を獲得し、第3政党へと躍り出た。これによりイタリア国会は、ベルルスコーニ元首相率いる中道右派を含め、相容れない3つの勢力に分かれてしまった。

 このため、大統領選びは難航。特に民主党は、その過程で造反者を出すなど混乱。大統領選びも、組閣の見通しも立たないなか、通算6度目の投票でナポリターノ氏が選出された。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、20日朝、ベルサーニ氏が大統領の元を訪れ続投を要請。続いてベルスコーニ氏率いる自由国民党、マリオ・モンティ氏率いる中道政党「市民の選択」それぞれの幹部が大統領を訪れたという。
 ナポリターノ大統領は再選に際し「国に対する責任を放棄できない」と発言し、政治家たちに(政権発足のため)責任ある対応を示して欲しいと望んだと、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。
 また、フィナンシャル・タイムズ紙は、この結果に対し「5つ星運動」のグリッロ氏が密室で決められた「クーデター」だと激しく非難したと報じた。

【イタリアの現状】
 イタリアは、ユーロ圏で三番目に大きな経済規模を持つ国だ。
 深刻な不況にもかかわらず、ヨーロッパ中央銀行の昨夏の決定により、一時的に危機を回避できたようだ。しかし、失業率は11%を超え、公的債務はGDPの130%にも上るという(2013年見通し)。これは、財政破綻したギリシャについで二番目に高い値だ。

 今のところ、ナポリターノ大統領から組閣について具体的な発言はないようだが、ニューヨーク・タイムズ紙は、大連立が組まれることになるだろうとの評論家のコメントを紹介した。緊急経済政策や新しい選挙法などの大幅な改革を進めるためだそうだ。
 また同紙は、「このままではもう安定した政権を生むことはできない。国会の機能が壊れている、それ自身では修復できないくらいに」という専門家のコメントを紹介した。さらに、各党対立のまま国会解散、そして選挙法が改定されずに選挙が行われ、再び似たような状況に陥る危険性も指摘した。

Text by NewSphere 編集部