EUがスペイン、スロベニアに「警告」 ユーロ危機再燃の可能性は?
欧州委員会は10日、スペインとスロベニアに対し財政状態の立て直しを要求した。一連のユーロ危機に対する更なる広がりを懸念してのことで、両国とも5月29日までに改革を起こさない限り、ユーロ上で初めて罰されることになる。同委員会は、他11か国の現段階の財政状況も調査している。
欧州委としては、ユーロ各国が3年以上に及ぶ経済危機に対して先手を打った行動に出られるか、次に債券市場の怒りに直面する恐れを抱きながら尻込みを続けるかをチェックし、どうサポートするかを計画する考えがあるようだ。
海外各紙は、スペイン及びスロベニアの財政状況、他ユーロ加盟国の現状、委員会の思惑やこれから予想される対策を報道している。
【スペインの情勢】
何年もの予算カットや、54兆円もの救済措置からの徹底的な財政再構築にも関わらず、25%以上の失業率や景気後退、家計や政府での債務増加を見ると、スペインの財政状況はまだ健全からは程遠いようだ。
欧州委のレーン氏も、「スペインは今後も引き続き努力する必要がある」とコメントしている。具体的な対策として、ブルームバーグは、社会保障システムの長期的解決策、中小企業の再建、給与の柔軟化、物流・エネルギー企業の規制緩和を挙げている。
一方ラホイ首相は、「データは自分が就任する2011年以前のものだ。さらなる対策が必要だが、現政府は目に見える形で結果を出している」と反論している。
フィナンシャル・タイムズ紙は視点を変えて、「スペインブランド」崩壊の危機を報じている。実際、複数の調査でスペインのブランド力低下が明らかになっているという。
その復権が、政府にとって重要な政策目的になっている模様だと報じられている。なお、政府はそのためにサイト立ち上げなどを行なっているが、そもそも汚職、経済危機など政府の自業自得だと批判する向きもあるという。
【スロベ二アの情勢】
スロベニアは、多額の不良債権を抱える金融部門への不安から、財政危機への懸念が取りざたされている。キプロスのように、銀行預金に対する課税が行われるのではないか、という危機感が沸き起こっていると報じられている。
実際、負債過多の法人からの返済滞納に対応するため、スロベニアの銀行は、更なる資本注入を金融市場に求めている。救済措置の可能性から、投資家が国債入札をためらったためだ。
ブルームバーグは、その背景をレポートから引用し、「政治的な行き詰まりと法的問題がスロベニアに財政状況の正しい把握と調整能力を高める力を失わせた故に、ヨーロッパ財政危機が高まった時期にその脆弱性が増加された」と報じている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、3か月以上ローンを滞納している法人が25%近くになることなどを挙げ、同国の課題は、「行き過ぎた債務の不均衡」をどう解消するかだと指摘した。
なお、ブラトゥシェク首相は、ユーロ圏への支援なしで危機を乗り越えると発言したが、その行方は不透明のようだ。
【ユーロ圏諸国の課題】
スペイン、スロベニアだけでなく、今後ユーロ圏諸国が、競争力の回復に向けた決定的な行動を取れるかが、大きな課題とされる。欧州委からは依然として、継続的な成長のための構造改革と、公的財政の改善、双方が重要という声が挙がっている。
また、状況に改善の兆しが見えた場合、政府の緊張感が薄れる事を恐れる声もあると、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は紹介した。