中国国債「格下げ」、その影響は?

 格付け会社フィッチ・レーティングスは、9日、中国の人民元建て長期国債格付けを「AA-」から「A+」に引き下げた。中国国債格付けの引き下げは、1999年以来初めてである。これは、中国政府、特に地方政府の大きな負債と不透明な資金繰りのためのようだ。
 なお、同業のムーディーズとスタンダード・アンド・プアーズの評価に変化はない。
 海外各紙は、フィッチの格下げ評価の詳細と、その影響について論じている。

【格下げの理由】
 フィッチは、中国経済における多くの「潜在する構造的弱点」を挙げたと、フィナンシャル・タイムズ紙は報じている。すなわち、平均収入の低さ、時間のかかる管理基準作り、そして急速な与信の拡大だ。同社は、シャドーバンキング(影の銀行)による危機を警告している。同社の試算によると、シャドーバンキングも含めた与信総額は、2012年末には、GDPの198%に達したという。
 サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、格下げ理由として、地方政府の債務が透明性に欠けると指摘されているが、これは中央政府の努力不足であると批判した。また、中国のインフレ管理について、好ましい対応が乏しいとも指摘している。

【なぜ地方債務が膨らんだか?】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、地方政府の莫大な債務について、世界経済危機後の2009年、中国の銀行が自国経済を強めるため、借り入れの急増を野放しにしたためだと分析している。これにより、中国経済は好調を維持することができたが、住宅供給価格は高騰し、地方の債務を積み上げたとみている。
 なおフィッチの発表によると、中国地方政府の負債は12兆8500億元にのぼり、これは2012年の同国GDPの25.1%にあたるという。

【格下げの影響】
 フィッチは、見通しは悪く格下げは適切だという判断だが、各紙とも、格下げ発表による影響はあまりないだろうとみている。
 サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、格付け会社ムーディーズは「2013年は、さらなる不良債権が表面化するだろう」とコメントしていることを報じた。なお同社は格下げしていない。
 またウォール・ストリート・ジャーナル紙も、格下げは、人民元建ての中国国内で取引される国債についてであり、海外金融市場に大きな影響はないだろうとしている。

Text by NewSphere 編集部