中国「鳥インフル」死者3人に 当局対応の賛否が分かれる理由とは
中国国営メディアは3日、同国東部で、新型の鳥インフルエンザ(H7N9型)による3人目の死者が出たことを明らかにした。これで国内の罹患者は9人。残る6人も重症と伝えられる。
中国では10年前、重症急性呼吸器症候群(SARS)の発生時に、パニックを恐れた当局が事実を隠蔽し、被害が拡大した。その影響もあってか、人々は疑心暗鬼に陥り、ネットでは真偽入り混じった大論争に発展している模様だ。
実際、WHOと中国当局が共同で研究を進めているが、同ウィルスの感染経路や危険性などの詳細は、変異を重ねるインフルエンザ・ウィルスの特性上困難で、いまだ明らかにはなっていないとされる。中国疾病予防コントロールセンター(CCDPC)は、死者の増加を受けて、肺炎の診断を受けた患者について、新型ウイルスのスクリーニング検査を行うという全国的な対応策に出るとしている。
海外各紙は、状況の急激な進展と、それに翻弄される関係者や市民の反応をそれぞれの視点から分析した。
フィナンシャル・タイムズ紙は、科学者がすでにH7N9型ウィルスの解析結果から「弱毒性鳥インフルエンザウィルス」としているというイギリスの識者の談を報じた。問題点は、ここ数年間猛威を奮い深刻な被害をもたらしている、強毒性のH5N1型病原性鳥インフルエンザより、発見しにくいことだと指摘されている。
さらに、WHOのインフルエンザ協力センターの責任者は、同ウィルスには、リレンザやタミフルなどの抗インフルエンザ薬が効力を持つことが発見されたとしている。また新華社通信は、患者と接触した約200名の検査結果がことごとく陰性であり、現状では人-人感染の証拠はないと報じている。
こうした、楽観的とも言える当局の検査体制やその発表については、賛否両論がある模様だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は今回の当局の対応について、「10年前とは対照的」と報じ、広報活動や疾病予防資源の投入のスピード感を、専門家が「教訓による成長」と評価していることを報じた。
ただし各紙の報道は、国民の政府当局に対する不信感はぬぐい去れていないことを浮き彫りにしている。
その理由は、公表の遅れとあいまいさにあるという。2日に判明した南京での死者について、当局の発表に先立ってネット上で指摘されたことや、人名について一部しか公開されていないことなどが、人々の恐怖心を煽っているようだ。
ガーディアン紙は、上海で死亡した87歳男性の家族がインフルエンザのような症状で病院にかかったことや、犠牲者(27歳男性、豚肉関連業)のおじにあたる人物の談話を報じている。「甥は健康そのものだった。なかなか風邪が治らず、病院に行った。単なる肺炎という診断だったのに、死んで病院を出てきた」というものだ。家族感染の可能性などが、弱毒性とされてきた同ウィルスの毒性の強さや、鳥だけでなく豚や人、さらに人同士の感染の可能性、先ごろ上海の川に大量放棄された豚の死体との関連性、などが危惧されており、それらを否定する当局への疑念となって噴出していることが強く示唆された。
ベトナムでは既に、中国からの鶏肉の輸入を一時的に禁じたという。被害の拡散を懸念する諸外国、そして、より厳しい国内の目が、当局の対応を注視している。