なぜアメリカの北朝鮮圧力は、イランより弱いのか?
31日、北朝鮮は労働党中央委員会総会を開催し、国際的制裁にも関わらず、核兵器を堅持する路線を確認した。総会は、核兵器を「数十億ドル」では取引されない「宝」と呼ぶ決議を採択。核兵器は、「国家の生命線であり、帝国主義者と核の脅威が地球上に存在する限り放棄できない」ものと確認。また核兵器保有により通常の軍事支出を削減できるため、並行して経済発展に注力することが可能になるとした。国営の朝鮮中央通信も、北朝鮮の核兵器が「経済取引のためのものでも政治交渉の切り札でもない」と報道した。ニューヨーク・タイムズ紙は、翌日の最高人民会議でもこの路線が承認されるものと見ている。
北朝鮮は、昨年12月の長距離ロケット打ち上げや2月の核実験を受けての国連制裁に直面している。最近では米韓合同軍事演習の圧力も加えられ、米軍はステルス戦闘機や大型爆撃機を展開して威圧していた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、それでも米国は、すでに核兵器を保有しイランより高度な弾頭輸送手段を進歩させつつある北朝鮮に対して、イランほどの注意を払っていないと報じている。核開発疑惑のあるイランには、公然と武力行使をちらつかせるなど、強い圧力を掛けていることを指摘した上での指摘だ。同紙は、米国が中国の出方を警戒していることや、米議会はイスラエルと関心を共有する傾向にあることなどを理由に挙げた。ブッシュ政権のアッシャー元顧問は同紙に、「我々がイランに掛けている圧力の3分の1でも北朝鮮に掛ければ、巨大な戦略的影響があるでしょう」と語った。
またフィナンシャル・タイムズ紙は30日、韓国と「交戦状態」に入ったとの北朝鮮の声明について、各方面からの懸念を伝えた。北朝鮮は国連制裁や米韓演習を非難し、「米国と韓国の傀儡集団が戦争に点火する軍事的挑発を犯すなら、全面戦争、核戦争に発展する」などと発表していた。だが同紙によると、アナリストたちのコンセンサスとしては概ね、「北朝鮮が戦争を開始する可能性は低いだろう」とのことである。北朝鮮は軍事技術で米国に劣っていることを自覚しており、定番の反米プロパガンダはむしろ、政権を固めるための国内向けアピールであるという。