キプロス支援策合意 各国が得たもの・失ったものとは?
EUとキプロスが、キプロスの支援策で合意した。キプロスは100億ユーロ(約1.2兆円)の支援を得られるが、国内2位のライキ銀行を閉鎖し、預金保険対象外の大口預金者に大幅な負担を求めることになる。泥沼化した一連の協議からは多くの負の要素も生じ、今後のEU・キプロスのあり方に大きく影響してくることが予測されている。
海外各紙は両者が受けた打撃や今後の厳しい状況をまとめている。
【経済支援に合意も、そのやり方に疑問の声も】
行き当たりばったりで埒の明かない協議の末に合意された経済支援の条件は、10万ユーロ以下の預金は保護される一方、それ以外の預金保険対象の大口預金者は大幅な負担を被ること、また、国内2位のキプロス・ポピュラー銀行を閉鎖するという内容で、EUはその強引さを最後まで貫き通したとも言える、と報じられている。一連の騒動から今後のEUやキプロスに打撃となる様々な要素が生じたとして、フィナンシャル・タイムズ紙は6つのポイントにまとめている。
1.銀行預金の安全性の崩壊:例え保険対象の預金であっても将来的に経済支援の犠牲になる可能性があることが印象付けられた。
2.キプロスからの資本逃避:高リスクな大口預金の海外流出によってキプロスの国際的な金融センターとしての地位は崩れるだろう。
3.キプロスが抱えることになった過度な負債:2017年までにGDPが20%減と予測されるキプロスにとっては巨額な負債である。
4.EUのトロイカ体制の亀裂:欧州中央銀行(ECB)、欧州連合(EU)の欧州委員会、国際通貨基金(IMF)のチームワークの悪さが浮き彫りに。
5.悪意のあるEUの政治姿勢:協議内容が不透明である上に、小国を潰しかねない選択を強要したことが民主主義に反しているとの疑問も。
6.明確になったドイツのスタンス:今後も出来る限り、救済費用を負担しない方針を固めたもよう。
また、ニューヨーク・タイムズ紙は、今回の騒動からEUでは2つの新たな法則が生まれたと報じている。
まず、今後各国は、自腹を切らずに救済を受けることはない(だろう)。次に、キプロスの銀行産業のように、特定の分野で自国の経済規模に不釣り合いなビジネスを行う「ギャンブル的経済」はあってはならない(同国では銀行産業がGDPの7倍の規模)。多額のロシアマネーが流れ込んでいるキプロスの事例は特有のものであり、他国への救済策の雛形には成り得ないと言われているが、EU側の連携の悪さや強引さが仇となって生じた不信感は拭いきれないようだ。
【結局のところ、EUに全面降伏した形に】
今回の騒動はひとまず合意にこぎつけたものの、キプロスにとって真の解決策となったかは微妙だ。各紙とも、今後のキプロスは経済破綻したギリシャの二の舞になるだろうと報じている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙では、最終的に合意された内容が、先日、キプロス議会が否決した初めの条件よりも厳しいものになったと指摘している。「我々ははったりを言い、負けた。結局は全てが失敗だった」とキプロス政府関係者は語っているという。