ミャンマー宗教対立が暴動に発展 民主化後退の懸念は?

ミャンマー宗教対立が暴動に発展 民主化後退の懸念は? 22日、ミャンマー中部の町メイッティラで、仏教徒住民がイスラム教徒住民を襲ったとされる暴動が発生。少なくとも32人が死亡、イスラム教施設や民家が多数焼失し、1万から数万とも言われる避難民が出る事態となった。テインセイン大統領は非常事態を宣言し、軍が出動、24日までには一応の沈静化をみた模様である。

 発端は、貴金属店におけるイスラム教徒の経営者と仏教徒カップルの口論と言われているが、すぐに街中での騒乱に発展したようだ。各紙は「人骨の破片が灰の山から突き出ていた」「遺体のほとんどが原形をとどめないほど黒焦げで発見された」などと惨状を伝えている。

 各紙は騒乱拡大の背景として、ミャンマー内部で60年来蓄積している宗教および民族対立を指摘している。ミャンマーでは昨年にもラカイン州の大規模な暴動で、イスラム教の少数民族ロヒンギャ族が襲われている。
 また今回も、事前に対立を煽るパンフレットが配られていたとの証言がある。フィナンシャル・タイムズ紙は、「地元の仏教徒はイスラム教徒に嫉妬しているのです。彼らは懸命に働き、賭け事も飲酒もせず、貴金属店をうまく経営し、お金を貯めているからです」との専門家の見方を伝えた。
 ニューヨーク・タイムズ紙は、政府には民族対立を本気で解決する気がない、今月にも政府の新聞が古い民族差別的な物語を平気で掲載している、などと抗議する各民族の声を伝えた。
 野党指導者アウンサンスーチー氏は、「法治がすべての元凶でしょうか?当局だけではなく、民衆もそうなのです」と、政府の弾圧ではない、民衆自らの暴力に苦言を呈した。

 一方ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、軍の働きにより現場が沈静化されつつあると報じつつも、これが軍部の発言力増大につながり、民主化を後退させうると懸念している。大統領スポークスマンは、軍こそが「唯一の、危機の際に平和と安定を回復する機関」であると公言し、実際に現地住民は「軍には耳を傾けていますが、警察の言うことは聞いていません」と発表しているという。

Text by NewSphere 編集部