キプロス、預金課税の代替案はあるのか?
キプロス議会は、ユーロ圏からの100億ユーロ(約1兆2千億円)の金融支援の条件として提示されていた預金課税について、法案を否決した。キプロスは今後代替案を模索しつつ、支援側との交渉を進めていくとみられる。
海外各紙は、厳しい財政難の中で、支援の代償を求めるEU諸国の圧力と国内の反発の間で、半ば立ち往生となっている政府の様子を報じている。
【キプロスの代替案をEUは一蹴】
キプロス政府は、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)から求められている「自国内での58億ユーロ捻出」の代案として、年金基金の国有化や、天然ガス資産による将来的な収入を糧とする債券の発行による代替財源の活用を提示したとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。年金基金から30億〜40億ユーロ、債券で15億〜20億ユーロの創出を見込む計算だ。
しかし、実際にガスを輸出できるのは早くても2019年と時間が掛かり過ぎる上に、債券を発行したところで政府の財政を悪化させるだけだとしてEU側には却下されたという。
預金課税案はキプロス全土から怒りを買っており、特にドイツによる陰謀だとする声が高まっているようだ。ニューヨーク・タイムズ紙によると、メルケル独首相を非難するデモ参加者らが大使館を襲撃しているという。国民に対してキプロスのアナスタシアディス大統領は「EU側に強要された」と弁明し、ドイツやEU側は「58億ユーロの捻出を条件としただけで、預金課税は提示していない」と主張しだす始末だ。
【課税に反対も、ロシアの積極的な介入はない?】
キプロス政府はEUとの交渉と並行してロシアとの協議も行なっているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。その中で政府は、経営難に陥っている2大銀行(ライキ銀行とキプロス銀行)の不良債権を「バッドバンク」に移行し、優良な部分だけを合併した「グッドバンク」を設立し、ロシアの国営金融大手VTB(対外貿易銀行)に売却する案をまとめたという。VTBは買収の計画はないと述べているようだが、この他にも銀行・天然ガス分野でのロシアの協力を求めて交渉を続けていく模様だ。
一部のロシア国民は同国銀行に多額の預金を保有していることもあり、ロシアは今回の預金課税に猛反対していた。とはいえ、キプロス支援に対する意欲は不透明であるとニューヨーク・タイムズ紙は分析している。
いずれにせよ、落とし所の見えない展開となっており、政府は銀行の臨時休業を延期している。祝日である25日までは少なくとも休業となる見込みで、早くとも26日の営業再開となると報じられている。