イラク戦争から10年 アメリカ・イラクはどう変わったか?
米国主導の多国籍軍がイラクに侵攻して始まったイラク戦争の開戦から、20日で10年がたつ。海外紙はあらゆる方面からイラク戦争を振り返り、今後のイラクを報じた。
【イラク国民の反応】
推定11万人以上のイラク国民が犠牲となったイラク戦争は、彼らの人生を一変させた。ニューヨーク・タイムズ紙はイラク国民にインタビューを行い、現状を報じている。総じて、未だに傷癒えぬイラク国民はまだ多くを語りたがらず、今もなお不安定な情勢のため、10年という節目に対して実感がない様子を報じた。また、フセイン政権が倒れた4月9日こそ、イラクにとって重要な記念日だという声もあるという。
同紙は、戦争による犠牲や困難に苦しむイラク国民の現状を報じ、人道援助、医療援助の必要性を強調しているといえる。
【アメリカ政府の対応】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、イラク戦争に詳しいジョンズ・ホプキンス大学のアジャミ博士のコラムを掲載した。
アメリカがイラク戦争を開始した要因は、当時のフセイン政権が大量破壊兵器を保有しているという点だったが、後の調査で虚偽であることが判明し、それでもアメリカは攻撃をやめることはなかった。長期にわたる戦闘で戦費もかさんでいることを認めながらもブッシュ前大統領は「フセイン政権の崩壊は正しい選択だった」と主張し、泥沼化した戦争を正当化したという背景を紹介した。オバマ大統領により2011年12月、米軍は完全撤退したが、戦争を「確実な終わり」には持って行けなかったと同氏は指摘。国内は、民族・宗派間の対立や政権のパワー・バランスの崩壊など不安定要素だけが残されていると同氏は危惧している。
【イラク戦争で成功した企業】
戦争により多くの負の財産が残ったイラクに対し、多くの利益を上げた企業があることをフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。実際アメリカは少なくとも1380億ドルをイラク戦争に費やしたという。
こうした中、例えば大手石油企業ハリバートン社の子会社KBRは、イラクでの米軍向けの宿舎建設をはじめ、輸送人員の派遣、ロジスティック関連物資、軍備支援などに貢献し、巨額の利益を上げたという。さらに同紙は、アメリカ企業は今後も、イラクの豊富な石油資源を利用して利益を上げようとすると予想。「終戦」しているとはいえ、今後も水面下で両国の対立は続くのではないかと懸念しているようだ。