英国、立ち場なし? 欧州議会が予算を否決した理由とは
2014年から2020年までのEU7年予算は、英国など財政規律派の予算貢献国と、補助金を守りたいフランスなどの受益国との対立により、昨年11月以来協議が進展しなかった。しかし先月、徹夜会談の末ようやく、支出上限を9600億ユーロとする縮小予算で合意がなされた。
ところが13日、欧州議会はその案を拒否する決議を、506対161(棄権23)で成立させた。
キプロスへの救済融資が14日からのEUサミットの議題となるなど、いまだ金融危機のダメージが残る中、欧州議会は、英国などが唱える緊縮策よりも、財政出動による成長・雇用の加速を望んでいると各紙はみている。対して、先月合意された予算は現予算より(インフレ調整後で)350億ユーロ削減され、欧州委員会の当初提案より1.03兆ユーロも少ない。
欧州議会は、予算規模よりも、状況に即応できる予算の柔軟性を問題視しているという。具体的には、以下のような要求がなされた。
1. 来年のEU選挙で誕生する新議会に、予算の見直し機会を与えること
2. 異項目間での予算融通を認めること
3. 加盟各国からの拠出金ではなく、直接のEU税を拡大すること
(3は、今回各国間の合意がまとまらなかったことに業を煮やした結果とも取れそうである)
各紙は2009年リスボン条約以降、欧州議会が発言力を増していることを指摘する。ニューヨーク・タイムズ紙は、「指導者たちが汎欧州の考慮事項に重点を置いてではなく、自分の国のために最良の契約を得ることに焦点を合わせた、熾烈な駆け引きが関わった結果」に対して、「重要なハードルを提示する」否決だと評した。決議に対しキャメロン英首相はスポークスマンを通じて、予算合意についての首相の見解が「明確不変」であることを表明した。
欧州議会は正式には7年予算を6月ないし7月に承認するため、各国首脳はそれまでに互いに新しい合意に達し、欧州議会の支持も取り付けなければならない。フィナンシャル・タイムズ紙は、それに失敗すれば来年1月には各種事業が中断に追い込まれると警告する。