共和党予算案の内容とは?

ライアン

ライアン 12日、米共和党ポール・ライアン下院予算委員長(2012年選挙の副大統領候補でもある)は、同党の予算計画案を提示した。この案はオバマ政権と民主党の路線をことごとく否定し、医療福祉制度改革などで、今後10年間に4.6兆円の大規模な支出削減を求めている。2013年時点の政府支出はGDPの22.2%、収入は16.9%とされ、財政赤字となっているが、この計画により2023年には収入と支出がともにほぼGDPの19.1%でバランスした、均衡予算が達成できるという。

 ライアン予算案は、低所得者・障害者の医療福祉のための「メディケイド」予算を、各州へのブロックグラント(予算の地方裁量化)により7560億ドル削減する。ニューヨーク・タイムズ紙は、各州がフードスタンプ(食費補助)に制限をつけるであろうことを示唆している。
 また高齢者医療保険のための「メディケア」予算も、民間プランへ補助金を出す形に転換することで、1290億ドル削減する。連邦政府機関の裁量的支出も2490億ドル減額。
 共和党内での不一致のためか詳細は示されていないが、国防費も抑制されるという。

 一方、個人の最高所得税率を39.6%から25%に、法人税率も35%から25%にカットする。「税の抜け穴をふさぐことで」増税は行わずに済ませる方針だ。

 ライアン氏とともに大統領に立候補し落選したミット・ロムニー氏は、最高所得税率の7%カットを公約としていた。ライアン予算案はそれを超える大幅減税であり、またロムニー氏は防衛予算の増額を唱えていたこともあって、民主党からは全面的な批判を浴びている。
 これに対しライアン氏は、党の原則は選挙結果によって変わるものではないという旨を述べるとともに、「我々には、国家を悩ませている大きな問題への、国としての解決策の責任があると考えます。地平線上に見えている債務危機、成長の遅い経済、貧困の中に閉じ込められた人々。我々は我々の答えを示しているのであります」などと自信を示した。ライアン予算案は、ただちに路線変更しなければ財政危機に陥り、政権が紙幣を刷り増す「世代間窃盗の最終段階」に至ると警告している、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた。

 民主党とオバマ政権も近々独自に予算案を示すとみられている。フィナンシャル・タイムズ紙は、両党の超党派会合がGDP21%ラインで均衡予算を達成する独自案をまとめていることも紹介するが、民主党やオバマ政権には均衡予算を急ぐつもりがないという。

 各紙は、いずれの予算案も実際に成立する可能性は薄いと予測する。総じて、「大きな政府」か「小さな政府」かをめぐる両党の綱引きは、容易に決着しそうにないという論調だ。

Text by NewSphere 編集部