ECBは楽観視するも、不透明なユーロ危機の行方は?
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は7日の理事会後に記者発表を開き、ユーロ圏経済は緩やかではあるが回復していくとの見通しを示した。また、先行き不透明な結果に終わった先月のイタリア総選挙に関しては、市場が短期間で正常に戻っていることからも、今後の大きな影響にはつながらないとの認識を述べた。
海外各紙は、一部からは楽観的過ぎるとの指摘も挙がるドラギ総裁の発表について報じている。
【ユーロ圏、未だ問題が山積み】
ドラギ氏は発表の中で、ユーロ圏の2013年の経済成長率予測をマイナス0.5%へ下方修正し、14年には1%のプラス成長になるとのECBの見解を述べた。また、インフレ率見通しは微調整にとどめ、13年を1.6%に据え置き、14年を0.1ポイント引き下げ1.3%としたとウォール・ストリート・ジャーナル紙はまとめている。さらに、政策金利を過去最低の0.75%で据え置いたと各紙は報じている。
インフレ予測は目標の2%を大きく下回っていることからも、金利の引き下げが正当化されるとの考えがECB内でも挙がっているようだが、議論の結果、慎重な判断となったようだ。しかし、ユーロ圏の経済は縮小を続けており、失業率は25年前の2倍である12%となり、問題は山積みのようだ。
ECBは今後もあらゆる可能性を検討していくとしながらも、圏内の問題の大半は信用拡大が低迷する領域にあり、同行ができることは非常に限られているとしているという。
ニューヨーク・タイムズ紙はまた、イングランド銀行(BOE)も政策金利0.5%と量的緩和枠3750億ポンド(約53兆円)を据え置くと発表したことを取り上げている。両行の量的緩和政策の維持を受け、今回の発表による株式市場への影響は小さく収まったようだ。
【混迷続くイタリア、ECBの介入で危機回避なるか】
2月のイタリア総選挙で安定政権誕生を阻んだ要因の一つは、有権者の多くがECB主導の緊縮財政策を拒否したためである。ドラギ総裁は同国で引き続き緊縮財政策は続行していくとの見方を示しているが、これは自己暗示的だとの指摘もされている。
市場への影響が小さかった理由に関しては、2つの見方があるとウォール・ストリート・ジャーナル紙は分析している。1つは、最終的には連立政権の発足によりECBの政策を引き継ぐ安定した政治が行われるという見方。もう1つは、安定政権がなくとも、ECBの市場介入により危機は回避できるだろうとの見方だ。実際、ECBは加盟国政府が欧州救済基金に支援を要請し、緊縮措置に同意することを条件に当該国の国債を買い入れる計画(OMT)を発表している(ただし条件を満たす政権でなければイタリアは対象外)。
一方、フィナンシャル・タイムズ紙は、9ヶ月前にフランスの選挙で反緊縮政策派が圧勝したものの、事態は改善されていないことから、イタリアでも大した変化は見られないだろうと指摘している。厳しい財政が定着してしまったユーロ圏では、各国のリーダーらの想像力も抑圧されており、政策の方向転換が困難となっているため、ユーロ危機は今後もしばらく続きそうだと分析している。