北朝鮮「制裁」決議は有効か?海外紙が分析
国連安保理は7日、2月12日に核実験を強行した北朝鮮に対する制裁決議を、全会一致で採択した。これにより、核開発に必要となる資金や物資、外交官などの諜報活動が制限されるものと期待されている。今回の制裁は、2008 年に初めて国連によって決議された制裁から数えて4回目となる。
なお北朝鮮は、米国に対して「核の先制攻撃を行う権利がある」などと述べ、威嚇している。
海外各紙は、北朝鮮と関係各国の思惑を報じている。
【北朝鮮、核攻撃の本気度】
北朝鮮の「論理」は、米国が朝鮮半島で戦争を画策しているから先制攻撃により自国を守る権利があるというものだ。その証拠として、米国と韓国で行われる共同軍事演習を挙げている。ただし、この演習は毎年定期的に実施されているものである。
ニューヨーク・タイムズ紙は、北朝鮮専門家の見方として、激しい口調による(米国への)非難は文字通りに受け取るわけにはいかないが、核攻撃という選択を完全に捨てているわけでもないという記事を掲載している。さらに同紙は、これまで8度北朝鮮を訪問した前ニューメキシコ州知事ビル・リチャードソン氏の意見として、核攻撃を実施することはないだろうが、今後しばらく対話の再開が遠ざかったこと、北朝鮮が威嚇のためにさらなる軍事的行動を取る可能性があることを指摘している。
なおウォール・ストリート・ジャーナル紙は、北朝鮮には核ミサイルを米国領土に到達させる能力がないという軍事アナリストの分析を紹介している。
【中国の立場】
ニューヨーク・タイムズ紙は、中国がこれまで3度北朝鮮に対して核実験の中止を求めてきた事実を取り上げるとともに、中国が苛立ちを募らせているという外部の専門家の見方を報じている。
フィナンシャル・タイムズ紙も、中国が北朝鮮による核実験強行に明らかに苛立っている、というスーザン・ライス米国国連大使の見方を紹介している。さらに同紙は、影響力が大きい中国共産党の機関誌の副編集長が先週同紙に寄稿した記事『China should abandon North Korea』(中国は北朝鮮を見捨てるべきである)を引き合いに出し、中国には北朝鮮との関係を見直すべきであるという意見が存在していることを報じている。この記事は関係見直しの根拠として下記を挙げた。
1.社会主義というイデオロギーを関係の基礎にするのは生産的ではない
2.北朝鮮に地政学的価値を求めるのは古い
3.北朝鮮には改革の意思がない
4.北朝鮮には朝鮮戦争をともに戦った中国に対する盟友という意識が希薄である
5. 北朝鮮の核は中国に向けられることもありうる
ただし同紙は、習近平新体制がそのような外交政策を取る可能性は低いとも指摘している。
【制裁の実効性】
フィナンシャル・タイムズ紙は、今回の制裁決議は根本的な解決にならないという専門家の見方を紹介している。それによると、中国がどの程度本気で制裁決議を実行するかが、実効性を担保するために重要であるという。ニューヨーク・タイムズ紙も、これまで貧しい北朝鮮が何とかやってこられたのも中国の支援があったからこそであり、その中国が制裁決議の枠を超えてエネルギーなどの供給を制限するかどうかは不透明だとしている。