EUの「銀行ボーナス規制」強化 その影響とは?
EUは2月28日、銀行員のボーナスに上限を設ける規制強化案で合意したことを発表した。新規制では、年間給与を超えるボーナスが原則禁止となり、例外的に株主の承認を受けた場合のみ、給与の2倍までを支給可能とする。
金融危機への備えとして銀行の資本強化を促すと共に、ボーナス目的のトレーダーによる無謀な運用を防止することを目的としている。EU加盟国27カ国と欧州議会の承認を取り付け、2014年の施行を目指す。
海外各紙は“EU経済の安全性を整える画期的な対策”と言われる動きに対する反発の声を中心に報じている。
【英国を中心に反発の声拡がる】
新規制に対して、ドイツなど多くの国が現段階での最善策と評価する一方、英国を筆頭に強い反発が起きているとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。有能な人材が米国などのライバル国に流出してしまう可能性や、非欧州系銀行の域内からの撤退などにより、欧州の金融業界の国際的な競争力が損なわれることが危惧されている。すでに転職の動きをみせている銀行員も少なくないという。
世界中で事業展開する銀行が多い英国では特に反発の声が大きく、「合意案は報酬とパフォーマンスを同調させる取り組みに反する」との非難や、「多くの英国拠点の銀行が引き続き世界で競争し、成功するのに十分なほど柔軟か否かを見極める必要がある」との声が挙げられている。
対策として基本給の増額を検討している銀行もあるというが、成果報酬型でなくなることで銀行員らのモチベーションが削がれ、業界の活性化が低迷してしまいかねないとニューヨーク・タイムズ紙は指摘している。
【実際には度を越したボーナスは減少しつつある】
ニューヨーク・タイムズ紙は、今回の発表のインパクトの強さに対し、その影響はそれほどでもないと分析している。金融危機の後に発表される法案の多くがそうであるように、今回の提案も既に手遅れ感が否めないとした。
確かに以前は自由な給与体系だった業界だが、2008年の金融危機以降、多くの銀行で自主規制を設けるようになってきたという。現に、英国では2008年のボーナス総額が118億ポンド(約1兆6500億円)だったのに対して、今年は15億ポンド(約2100億円)、17年には13億ポンド(約1800億円)と減少傾向にあるという。そのため、金融業界への影響よりも、脱EU傾向にある英国で、EU賛成派であった金融業界が反対派へと姿勢を転じてしまうことが予想されるとした。