エジプト気球墜落事件 背景と影響とは
エジプト南部ルクソールで26日午前7時半頃、観光遊覧飛行中の熱気球が爆発、墜落した。エジプト保健省や現地の病院関係者によると、日本人4人を含む乗客19人が死亡した。事故発生時、皆気球から逃げようとしたが、結果的に操縦士と英国人1人のみが命を取り留めた。
事故を起こした気球を運営していたのは「スカイ・クルーズ」社。同社スタッフは時事通信の取材に対し、「操縦士は約10年の経験があるベテランだ。突然、ガスボンベが爆発した」と語り、偶発的な事故だったとの認識を示した。地元当局は事故を受け、ルクソールでの気球の運航を禁止する措置を取った。
海外各紙は、この事件の背景と、観光産業へのダメージについて報じている。
熱気球ツアーについては、2009年、2008年にも、それぞれ16人と9人が負傷する事故が起きており、教訓が生かされていないと批判されている。今回の事故の原因はまだ判明していない。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、週1回行われるはずの点検が月1回になっていた他社の例を紹介し、メンテンナンスの甘さを示唆した。同紙は、モルシ大統領就任後、甘い管理が原因とみられる様々な事故が相次いで起こっていることも指摘している。革命の影響を示唆する地元の声も紹介している。
対して、モルシ現大統領と彼の政党でエジプト最大のムスリム同胞団は、「ムバラク前大統領の下で育った怠慢文化」を非難したという。
エジプトにとって観光産業は収入の大きな要だ。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、観光産業は、エジプト革命以前ではGDPの11%を占めていた。特に、事故が起きたルクソールは、古代エジプトの建造物が一望できる場所として観光名所になっていた。
しかし、ムバラク前大統領を退任させたエジプト革命の混乱の影響で、旅客数は減少している。フィナンシャル・タイムズ紙によると、2010年の観光者数は1470万人、利益は125億円だったのに対し、2012年は観光者数1150万人、利益100億円に減少したという。
その状況下における今回の事故は、エジプトの観光業にさらなるダメージを与えるだろうと懸念されている。モルシ大統領は、テロではなく事故であることを強調し、エジプト観光の安全性を訴えているが、業者らは観光客の減少は免れないと悲観的なようだ。