交渉協議目前のイラン、原発新設とウラン鉱山発見を発表 そのねらいとは?
イランのアッバシ原子力庁長官はこの度、国内16ヶ所を原発建設予定地として選定したとことを明らかにした。同国では最近新たにウラン資源が発見され、埋蔵量が1527トンから4400トンに増加している。今後15年間にわたって生産量を増やしていく計画だという。
イランの核開発疑惑をめぐっては、米国やEUが度重なる経済制裁の強化を行なってきた背景がある。今月26日にはカザフスタンでイランと関係6カ国( 米国、中国、ロシア、英国、フランス、ドイツ)がこの問題について協議する予定となっている。
海外各紙は、この協議を目前とした今回の発表とその背景にある状況などを報じている。
【あくまで軍事目的ではないと主張】
ウラン開発の平和的利用を主張するイランは、将来の原油枯渇に備え、増え続ける電力需要を満たすためには原発施設があと20ヶ所必要だと述べているという。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、今回は地震や軍事的攻撃に対する耐久性に重点を置き、該当箇所を選定したようだ。
さらにフィナンシャル・タイムズ紙によると、イランは最新の遠心分離機IR-2Mの導入を進めているようだ。この最新機器はこれまでの数倍のスピードでウランを濃縮することが可能だという。既に180台を導入しており、近くさらに180台増やす予定だという。最終的には5%程度の低濃縮ウランを生産するために3000台の導入を目指す計画を明らかにしている。
またビジネスウィーク誌は、イラン政府が、医学的研究のためには、発電に必要といわれる濃度の4倍にあたる20%に濃縮する必要があると話している点を取り上げ、このことからも、諸外国からはさらに核兵器開発の疑惑が強まっているとしている。
【中露を味方に?したたかな戦略】
アナリストらは、イランが数日後に控えた大国6カ国との協議で用いる交渉材料として今回の発表をしたものとみているとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。核兵器にも転用できる濃度のウランをちらつかせながら、他国に対して「過去の過ちを訂正し、現実味のある新たな戦略」を要求する強気な姿勢だとみられている。具体的な要求は明らかではないが、少なくとも フォルドウ濃縮試験施設の運営や、5%のウラン濃縮作業、中間濃縮ウランの輸出は譲らない模様だ。一方で、20%への濃縮に関しては制裁措置の解除を条件に延期する余地もあるとしている。
また、協議に参加するロシアや中国に対しては「欧米諸国の要求に屈さないように」との呼びかけをしており、イランにおけるウランなどの「平和的」開発は続行すると断言しているという。