強制削減回避へ、民主・共和両党の間に妥協点はあるか
米国では昨年から、「財政の崖」回避に向けて民主、共和両党が政策の制定に向けて議論を続けてきている。特に焦点となっているのが3月1日から予定されている財政歳出への一律な強制削減の発動で、オバマ大統領は経済や国の主管体制に大きな打撃を与えるとして実施回避方法を模索する考えを明らかにした。民主党は増税と的を絞った小規模な歳出削減を組み合わせた法案をまとめているが、共和党が増税に反対していることから合意に至っていない。
海外各紙は駆け引きが進む両者の言い分などを取り上げている。
【食い違う強制削減による影響への予測】
強制削減が発動されると、まず40億~50億ドルの歳出削減のために政府関連機関の職員らの大半を占める100万人以上が、少なくとも9月まで計22日間程の無給休暇を強制されることになるとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。 社会保障や医療費補助制度、医療保険、連邦準備金、米国郵政公社などは対象外となっているが、オバマ大統領は航空管制や国防や緊急救援体制などの質の低下を懸念し、経済に大きな打撃となると指摘している。しかし一時休暇には30日間の事前通知期間が必要であるため、実施されるのは4月以降となる予定で、それまでに民主・共和党間で代案の合意にこぎ着けたい考えだ。肝心の共和党は経済への悪影響は否定していないものの、 回避措置は支出削減だけで増税は含めないとの主張を崩していない。
一方、議会での熱い議論とは対照的に、民間企業は増税や政府による債務不履行の可能性に比べて今回の強制削減の影響は最小であるとの楽観的な見解を示しているとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。実際に、2011年8月の債務上限危機の際には企業側は活発なロビー活動や政府への働きかけを行なっていたが、今回は目立った動きはないという。無論、防衛のように政府機関との関わりが深い業界での打撃は大きいだろうが、医療や石油など分野によっては増税よりも削減政策を受け入れる傾向にあるようだ。
また、日本への影響としては食肉処理の安全性を確かめる検査官の休職によって業界で100億ドル規模の減産となる可能性が挙げられる。日本は2月に米国産牛肉のBSE対策の輸入規制を緩和したばかりだ。フィナンシャル・タイムズ紙によると、農業予算のカットで検査官に約2週間の休暇が必要となることで食肉出荷に影響が生じることになりそうだ。
【若者の消費を改善していく術は?】
フィナンシャル・タイムズ紙はまた、政府の苦肉の策として以前から問題視されてきた学生ローン問題も取り上げている。多額のローンを抱えて若者の消費が落ち込んでいることや返済不履行が経済成長の妨げになっていると指摘されている。実際に35歳以下の個人消費のうち、車や住宅購入、クレジットカードの使用限度は全て減少している。 今後は、ローンの借換えなどの緩和政策を打ち出し解決に向けた対策を進めて行きたいもようだ。