中国サイバー攻撃激増 「米中サイバー戦争」勃発か?

 18日、米サイバーセキュリティ会社マンディアントは、「APT1」「コメントクルー」などと呼ばれる犯罪的ハッカー集団の正体が、中国人民解放軍総参謀部の非公式部署、通称「61398部隊」であると断定した。グループは2006年以来、米国を中心に少なくとも16ヶ国141の企業・団体のコンピュータに侵入し、機密データを盗むなどした疑いが持たれている(実数は数千とも言われる)。数年にわたり侵入され続け、何テラバイトものデータを盗まれた例もあったという。

 同部隊が駐留するのは上海・浦東地区の「12階建ての白いビル」を含む一角で、厳重に警備されている。攻撃元、あるいは盗まれたデータの送り先のIPアドレスはほとんどがこの建物と関連付けられたアドレスであり、その他攻撃に使用されたツール等の特徴や、個々のハッカーの行動追跡結果、この建物の通信回線増強に関する中国プロバイダーの内部メモなど多数の証拠、そして攻撃の規模から見ても、中国政府あるいは軍の関与は疑いないとされる。そうでなければ「上海ベースの通信インフラへ何年間も直接アクセスできている簡体字中国語話者の秘密組織が、61398部隊の門のすぐ外で、企業規模のコンピュータ・スパイ・キャンペーンに従事している」ことにならざるを得ない、とマンディアント社は述べている。なおハッカーたちは、中国自身が情報統制のために張っているファイアウォールを回避するためか、自らのfacebookやtwitterページを経由しており、各人の身元特定につながるとみられている。

 中国政府および軍は、この告発に反論している。国防省は「中国軍がハッキングに関わっているとの訴えは非専門的であり不正確である」と述べた。また外務省は、「サイバー攻撃は匿名的・越境的なものであり、攻撃源の追跡は困難であります。よって報告の信憑性は疑問であります」と語った。逆に、中国自身が頻繁にサイバー攻撃の犠牲になっており、そのほとんどの「攻撃源は米国」だと発言している。

 中国発のサイバー攻撃は急増しているという。米アカマイ・テクノロジーズ社の調査では、2012年第3四半期、世界のサイバー攻撃の33%は中国が発生源であり、世界一であった。第2四半期は16%であり、大幅に増加している。なお米国は2位で、同じく12%から13%へ増加している。
 本件を特に詳報しているニューヨーク・タイムズ紙は、さらに、攻撃グループの目的が「単にデータを盗み出す」事から、「米国の電力網、金融機関、航空管制システムなどのインフラシステムを乗っ取る」事に移りつつあると指摘し、これこそ最も憂慮すべき事態だと論じている。

 各紙とも、オバマ政権は、コンピュータハッキングの問題のために世界第2の経済大国である中国ともめたくないのが本音ではあるが、事ここに至っては公に動かざるを得ないのではないかと見ている。

Text by NewSphere 編集部