キプロスはユーロ危機の新たな火種となるか?大統領選の行方に注目集まる
ユーロ圏で債務問題を抱えるキプロスにて、大統領選挙が17日に行われた。ベイルアウト(緊急融資)推進派である野党のアナスタシアデス候補が、得票率45.4%で第1位となった。過半数には達しなかったため24日に決選投票が行われ、与党推薦で得票率26.9%のスタヴロス・マラス氏と対決するが、アナスタシアデス氏の勝利は確実視されている。
新大統領はキプロスの危機的財政を立て直さなければならない。キプロスは銀行部門が実経済の8倍もの規模を持ち、銀行はギリシャ国債を大量に保有していたため、金融危機と債務再編のあおりをまともに受けて経済が急速に悪化。ウォール・ストリート・ジャーナル紙がインタビューしたタクシー運転手は、日に80~100ユーロ程度あった収入が、最近では5ユーロという時もあったという。国民の危機感を反映して、選挙の投票率は80%に達した。
アナスタシアデス氏は、まず早急にEU、国際通貨基金、欧州中央銀行などと、緊急融資の交渉に臨む考えだ。キプロスは6月、主に外国人投資家が保有する14億ユーロの国債を返済しなければならない。さらに弱体化した銀行部門の増強なども合わせると、総額170億ユーロが必要と見られている。これはキプロスの年間GDPに匹敵する規模だ。
キプロスは、緊急融資を受けることになれば、ユーロ圏では5国目となる。すでにギリシャなどでも導入され国内の不満が大きい、過酷な緊縮政策を受け入れなければならないが、選挙結果を見るに、政治家も国民も覚悟ができているのでは、と報じられている。
なお、退任するフリストフィアス現大統領は、緊急融資策に抵抗し、EUとの関係をこじらせてしまったため、新大統領にはそれを修復する才覚も必要だとウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘した。
一方、好材料についても紹介されている。石油やガスを探査している国際エネルギー企業から約2億ユーロの現金注入がある点と、ロシアが既存融資25億ユーロの返済を5年延長すると示唆している点だ。これについては、欧州委員会のレーン経済担当委員も、ロシアの意向を歓迎しているという。
しかしこの背景には、ロシア人が200億ユーロとも言われる銀行預金をキプロスに持つ現状がある(マネーロンダリング疑惑も存在する)。ことの成り行き次第では、これら預金者が損失計上を強いられるか、そうでなくとも「非EU市民の預金に」監査が入ることも考えられると報じられている。