欧州、異なる食品ラベルはなぜ貼られたのか?
ヨーロッパで、食肉表示偽装問題が注目を集めている。
大手スーパーで販売されていた「牛肉100%」のビーフバーガーやラザニアなどに、馬肉が含まれていたことが発覚したためだ。13日、EU保健担当委員は各国関係者と馬肉問題の対応に向けて協議する運びとなった。
海外各紙は、欧州の食品安全体制について論評している。
【複雑な流通経路】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、欧州における食品の流通経路が非常に複雑であることを強調している。問題となった商品を製造するスウェーデンの冷凍食品大手フィンドゥスは、フランスの食肉会社から肉を調達しており、さらにその会社はキプロスの仲介業者を介してルーマニアの精肉会社から肉を得ていたという。こうした状況下、食肉業界と緊急会議を開き、誤ったラベルが貼られた食品がどのようにして店頭に並ぶことになったか究明しようとする国も出てきたという。
ニューヨーク・タイムズ紙は、誤ったラベルが故意(詐欺)によるものであるのか、ミスによるものか、はっきりしていないとの仏政府高官の見解を紹介している。なお同紙は、ルーマニア首相の反論として、ルーマニアの会社がEUのルールを破った事実はなかったとする声明を紹介している。
【内在する問題】
フィナンシャル・タイムズ紙は、EU の食品の安全を確保するシステムが世界最高だというEU高官による弁護を紹介する一方で、そのシステムの欠陥についても言及している。それによると、欧州は狂牛病の流行以降確かに、動物が飼育され屠殺された場所を迅速に特定することができるようになったが、加工食品については、肉の種類がラベルに表示されるだけであり、その生産場所までは銘記されないという。そのような厳密な措置を取ることは、含まれている食品が極めて多岐に渡るため実質的に不可能であるらしい。また、EUの食品安全基準を順守するために必要となる調査員がフランスではここ10年間で少なくなっていることも指摘している。
【EUの措置は?】
フィナンシャル・タイムズ紙は、今回の馬肉事件が”衛生上の問題ではなくラベルの問題である”とEU保健担当委員のスポークスマンが述べたことを取り上げ、問題を軽視していると論評した。また同紙は、”いかなるものにも禁止措置を取る段階ではない”とする同スポークスマンの声明を紹介しているが、この措置には欧州という単一の市場を維持し、報復的な禁止措置を防ぐ狙いがあると同紙は見ているようだ。
なおウォール・ストリート・ジャーナル紙は、馬肉自体に危険性はないものの、馬に使用されていた治療薬が人間に害を与える可能について言及している。