オバマ大統領、イスラエル初外遊の狙いとは?
カーニー米大統領報道官は5日の記者会見で、オバマ米大統領が今春イスラエルを訪問すると明らかにした。パレスチナ自治区のヨルダン川西岸とヨルダンも訪れる予定という。
1月の総選挙で3期目の就任が決まったネタニヤフ・イスラエル首相と、イラン核問題やシリア情勢など共通の懸案事項について幅広く協議するとみられる。カーニー報道官は具体的な日程を明らかにしなかったが、イスラエルのメディアは3月20日に現地入りすると報じた。
海外各紙は、2期目に入って間もないこのタイミングで同国を訪問するオバマ大統領の意図、新政権発足後のイスラエルへの影響について考察した。
【オバマ大統領の目的とは】
オバマ大統領は、2期目の外交の重要課題であるイラン核問題のほか、頓挫しているパレスチナ和平交渉を協議するとみられる。ただ、イラン外交交渉にどれだけの時間をかけるか、軍事行動に発展するおそれのある「一線」をどう定めるかなど、まだ合意に至っていないとウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘した。そのほか、西岸地区へのイスラエルの入植をめぐっても、長年ぎくしゃくしているとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。
また同紙は、「アメリカが公平な和平調停者となるなら、我々はオバマ大統領の訪問を歓迎する」というパレスチナ解放機構(PLO)のシニアメンバーのコメントを掲載した。しかしカーニー報道官は6日のマスコミへの説明会で、「大統領は和平交渉について特別に提案する予定はない」と述べた。
【今後のイスラエルの動向】
イスラエルの新政権は主に予算や生活費の問題、社会の見直しに取り組むと思われていたが、米大統領訪問の発表で外交政策に焦点が移るとみられる。
ネタニヤフ首相は、2日にペレス大統領から要請され、3月16日の期限に向けて組閣の最中である。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米大統領の訪問が次の組閣に影響するとみており、現在の宗教政党よりむしろ穏健派と連立する見込みが高いと報じた。フィナンシャル・タイムズ紙は、第2党の中道新党イェシュアティドなども政権入りさせ、財政赤字やイラン核開発などの国内・国際課題に取り組むだろうというアナリストの見解を掲載した。同紙はまた、イスラエルが先週、パレスチナ自治区の「経済的困難」を理由に約1億ドルを送金すると発表したと報じ、緊張緩和の可能性が高まっているとの見方を示した。
なおオバマ氏のイスラエル訪問は就任後初めて。これまでにイスラエルを訪問した現職大統領は4人で、ニクソン元大統領とカーター元大統領は1回、ブッシュ元大統領は2期目最後の2008年になって2回、クリントン元大統領は4回訪問した。