中国艦船、自衛艦にレーダー照射 今後の両国関係を海外紙はどう分析したか?

中国艦船、自衛艦にレーダー照射 今後の両国関係を海外紙はどう分析したか? 日本政府は中国の軍艦が過去3週間に2度、日本の海上自衛隊の護衛艦やヘリコプターに対し、射撃管制用のレーダーを照射していたと発表した。小野寺防衛相は5日の緊急記者会見で、「極めて特異」な事態だとし、「一歩間違えれば大変危険な状態に発展していた」と述べた。日本政府は、外務省中国・モンゴル1 課長から在日中国大使館参事官に、北京の日本大使館次席公使が中国外務省アジア局長に、それぞれ抗議を行った。一方中国当局は「事実を調査する」としか述べていない。
 昨年9月に日本政府が個人所有だった尖閣諸島を買い上げ、国有化して以来、領有権を主張する中国側が強く反発し、さまざまな行動に出ることで、両国間の緊張が高まってきた。特に、昨年12月13日には、中国が初めて、それまでの「領海」から「領空」の侵犯行為に踏み切ったことで一気に緊張が加速していた。政権交代後、公民党の山口代表が訪中・習近平総書記と会談したことで一旦沈静化したかに思われた矢先の今回の発表だった。
 中国の狙いは何か。日本、アメリカはどう対応するのか。海外各紙はそれぞれ分析と懸念を報じた。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、中国の専門家は、日本による「誇張」と、中国の同海域での監視行動を抑制する目的があるのではないかと分析している模様だ。
 またニューヨーク・タイムズ紙は、多くの中国人にとって尖閣諸島は、日本の「帝国主義」によって奪われ、未だ返還されていない「最後の領土」だという。海洋資源が見つかって初めて中国側が領有権を主張し始めたとする日本の主張とは大きく異なる。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、習氏も、共産党の腐敗への非難と並んで高まる国内の「愛国主義」と「領土意識」に苦慮しているのではと報じた。実際中国では、一部で戦争の可能性が公に論じられるほどだという。
 ただし国内からは、「努力の末に到達した現在の繁栄を、戦争で台無しにしてはならない」という自制論も上がっている模様だ。党機関紙『人民日報』の国際版である環球日報には、中国人民解放軍総後勤部の劉源氏の「アメリカと日本は中国の追い上げを恐れ、あらゆる手を尽くして中国の発展を食い止めようとしている。それにしてやられてはならない」という発言が載せられたという。

 日米安保条約によって、日本を「守る」責任を負うアメリカにとっても、他人事ではない。アジアでの戦争は望まないが、日本が弱体化し、南シナ海の覇権を目論む動きを見せる中国を勢いづかせるわけにもいかない。そのためにも、日中の対話を強く求めているという。
 このように、戦争の回避という意向では一致する三国だが、問題は日中間に直接的な対話のチャンネルがないことだと多くのアナリストは述べているという。中・下位レベルや現場での小競り合いや誤解が生じないよう、上層部の相互交流が必要という論調だ。
 元オーストラリア首相のケビン・ラッド氏は、米誌フォーリン・ポリシーに、東アジア地域はかつてのバルカン半島のような、21世紀の“海上火薬庫”の様相を呈しているという記事を寄せたという。日中が第一次世界大戦という「轍」を踏まずに事態を打開できるのかが注目されている。

Text by NewSphere 編集部