【マリ紛争】世界遺産都市の宝物が守られたわけ

マリ軍事介入の今後の展開は? マリからイスラム過激派勢力の掃討を目指すフランス軍は、4日、マリ北部にあるイスラム過激派の燃料貯蔵庫と避難場所を夜間空爆したと発表するとともに、奪還した世界遺産都市トンブクトゥの管理を今週中にマリ国軍に引き継ぐことも明らかにした。仏軍は5日トンブクトゥを離れてマリ北部の都市ガオに向けて進軍することになる。
 海外紙はマリ情勢の新展開について報じている。

【泥沼のゲリラ戦へ?】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、地雷が使用されたことを受けて、マリにおける軍事衝突がゲリラ戦に変化した兆しがあると報じた。同紙は以前からイスラム武装勢力が拠点としていた都市から戦略的撤退を行ったと見ており(【マリ紛争】フランス軍、世界遺産都市トンブクトゥ奪還・「想定外」の課題とは?)、今回、イスラム過激派が退避場所からゲリラ的攻撃を開始した可能性があるとしている。4日の国連人道問題調整事務所の発表によると、キダルなどのマリ北部の都市を結ぶ道路上で地雷あるいは簡易爆発物によって民間人2名が死亡したという。さらにマリ北部地域のゴッシ近郊で先週地雷が爆発し兵士4名が死亡した模様だ。

【世界遺産都市の宝物はどうなったか?】
 先週仏軍が世界遺産都市トンブクトゥをイスラム過激派から奪還した際、千年前から伝えられる写本が多数収蔵されていたアハメド・ババ研究所に、イスラム過激派が火を放って逃走したと伝えられており、その貴重な宝物の焼失が案じられていた。しかしニューヨーク・タイムズ紙によると、写本の焼失は全体の5%に留まり、そのほとんどが無事首都バマコに運び込まれていたという。同研究所が米国などから資金を得ていると過激派に発覚するのを恐れた職員が、昨年の8月から、わずかずつ秘密裡に写本を運び出していたという。ニューヨーク・タイムズ紙によると、トンブクトゥは古くから交易と文化の交差点であり、写本を作成することによって生活の糧を得ていた家族が、マリ帝国の黄金期を伝える多数の写本を後世に残したという。そのような家族は、事があると写本を秘匿することを習慣にしてきており、それが今回生きたのではないかと同紙は報じている。

【南アの気まぐれな政策】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、アフリカ大陸において政治的・経済的に大きな影響力をもつ南アフリカが、今回のマリ軍事介入においてフランス支持に回ったことを「気まぐれな」外交政策と評した。南アフリカは「アフリカの問題はアフリカで解決する」という方針を至るところで主張するため、アフリカ諸国の旧宗主国であるフランスと、これまで一度ならず対立してきたという。2010年にコートジボワールで2人の大統領が並存した問題でも、2009年に起きたマダガスカルのクーデターでも、その対処を巡って争った経緯があるという。
 ただし同紙によると、南アフリカはマリへの支援金を拠出しているものの、日本や欧米に比較するとわずかであるという。

Text by NewSphere 編集部