イスラエルのシリア空爆、1日明けての報道は?
30日、イスラエル空軍機がシリア領内を空爆したと伝えられた。イスラエルは攻撃についてコメントを拒んでおり、西側当局によるとこの攻撃は、シリアからレバノンのイスラム武装勢力ヒズボラへ送られる、ロシア製SA-17S対空ミサイルの車列を狙ったものであるという。一方シリアは、攻撃されたのは武器輸送車列ではなく首都ダマスカス郊外の研究施設であり、施設に甚大な損害が出たほか2人が死亡・5人が負傷したと発表している。
亡命を悩んでいるというシリア軍将校は、当該施設は武器搬出の積み替え駅でもあるとニューヨーク・タイムズ紙に証言した。またイスラエル機の運動パターンからみて、攻撃目標は動いていたはずだと主張する軍事アナリストもいる。
イスラエルは化学兵器のほか、対空ミサイルのような「ゲームバランスを一変させる」おそれのある高度在来兵器についても、以前から神経を尖らせていた。今回の攻撃も、ヒズボラに対空兵器が渡り将来の空襲作戦に悪影響が出ることを憂慮したとされる。イランの報道ではシリア軍の士気をそぐ、シリアへの外国の軍事介入世論を煽る、といった目的もあると報じられた。
しかしイスラエルの研究者にも、「兵器移転阻止という戦術的目標のためにシリア内戦に関わって、高価な戦略的リスクを取るべきではない」と、従来通りの傍観を勧める意見がある。またレバノンのハンナ退役大将は、ヒズボラがSA-17Sを受け取っても使いこなせないはずだと疑問を呈した。ヒズボラ支援という以外にシリアがSA-17Sを輸送する理由としては、単なる反乱軍の攻撃からの退避(退避先がヒズボラとは限らない)というものや、イスラエルの出方を探ったという観測もある。
ともあれ31日までにシリア、ヒズボラ、レバノン、イラン、それにロシアまでも、口々にイスラエルの攻撃を厳しく批判した。またシリアはゴラン高原の国連オブザーバーをダマスカスに召還し、さらに1974年の停戦協定違反であるとして国連提訴に踏み切ったと述べている。
しかし各紙は、シリアやヒズボラに今イスラエルと戦端を開く余裕はなく、ただちに武力報復につながる可能性は低いと見ている。また2年近く内戦の続くシリア国内の反体制勢力は、シリア政府軍は自国民を弾圧するのには迅速なくせに、外国から攻められても無力だと批判した。