【マリ紛争】フランス軍、世界遺産都市トンブクトゥ奪還・「想定外」の課題とは?
マリ北部を支配するイスラム過激派の掃討作戦を敢行しているフランス軍は、28日、昨年4月以来イスラム過激派の拠点の一つとなっていた世界遺産都市のトンブクトゥを奪回した。ただし、イスラム過激派は退却時に、千年前のイスラム文化を伝える貴重な遺物を多数収蔵する施設に火を放ったと見られており、その焼失が案じられている。なお、仏軍は 26日にも北部で最大の人口を抱えるガオを奪還していた。
海外各紙は、日々刻々と変化するマリ情勢を多方面にわたって報じている。
【変化した仏軍の役割】
仏軍の戦略の変化をウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。これは、国連の当初の案(マリ北部地域の解放作戦がアフリカ連合軍によって引き継がれる)が実施されることなく、仏軍の戦車がトンブクトゥに殺到したことについて言及したものだ。同紙によると、現状では、重装備の仏軍が北部の軍事拠点を叩き、奪還した都市をマリ軍とアフリカ連合軍(チャド、ニジェールからなる)が維持するという形態を取っているらしい。同紙は、“フランスの目標がアフリカ諸国軍への引き継ぎであり、仏軍がマリに留まるつもりはない”というエロー仏首相の談話を掲載している。しかし同紙によると仏政府は、武装組織が突如南に進撃してきた時でさえ、仏軍の任務を南進阻止に限定すると表明していたという。
なお、同紙は、アフリカ連合軍が多数結集するまで今後どの程度時間がかかるのか依然として不明であると報じている。その原因は、移動手段と軍事物資の不足によるものだという。
【戦略的撤退】
フィナンシャル・タイムズ紙は、昨日の報道に引き続き、仏軍の快進撃はイスラム過激派の戦略的撤退が原因であると見ている(【マリ紛争】フランス、イスラム過激派の都市奪還-解決へ向けた一歩か、泥沼か?)。イスラム過激派の兵力は数千人であると見られているが、多数の死傷者が出ているという報告が未だないという。同紙は、1月11日に仏軍による空爆が始まって間もなく、イスラム過激派が戦略的撤退を開始したと見ている。
さらに同紙は、仏軍の快進撃は予測の範囲内であるという仏トゥールーズ大学の教授の見解を紹介している。同教授は、イスラム過激派は空爆に抵抗することが無益であるということをアフガニスタンで学んだと見ている。同教授によると、イスラム過激派の戦略は、空爆から逃れ撤退することによって敵を都市におびき出し攻撃をしかけるというものだという。
【米軍無人探査機は飛ぶか?】
こうした中、米軍司令部が北西アフリカに無人探査機の基地を建設する計画を策定中であるとニューヨーク・タイムズ紙が報じた。現在のところ、基地の任務は仏軍を支援する偵察に限定されているようだが、将来的には目標物へのミサイル誘導も視野に入れている、との司令部高官の談話を掲載した。今後、米政府の承認が必要となるが、候補地に上がっているのは、国境をはさんでマリの東側に位置するニジェールであるという。
なお同紙によると、米国務省はこれまで、米国がアフリカに軍隊を展開しようとしているという批判を恐れ、同地域で偵察機を飛ばすことについて極端に神経質になっていたという。