【マリ紛争】フランス、イスラム過激派の都市奪還-解決へ向けた一歩か、泥沼か?
ロイター通信によると、フランス軍とマリ軍は27日、イスラム過激派が拠点としていた世界遺産都市トンブクトゥに到達した。仏軍は前日の26日に北部最大の都市ガオを奪還していた。
また26日、米国は仏軍に対する新たな支援として空中給油の実施を発表した。
海外各紙は、マリ情勢の内情について詳報している。
【イスラム過激派による支配の実態】
ガオを支配していたイスラム過激派の施策について、ニューヨーク・タイムズ紙は報じている。解放された喜びにひたるガオ市民によると、女性はスカーフで顔を隠すように強要され、背いた者は厳しく殴打されたという。また、多くの娯楽が禁じられていたという証言も報じられている。特に音楽の禁止は、近隣地域が世界的に有名なミュージシャンであるアリ・ファルカ・トゥーレの出身地であるという背景もあって、不満が高まっていたという。
【イスラム過激派は長期戦を覚悟】
イスラム過激派からガオを奪還し、首都バマコへの南進を迅速に阻止できたことにフランス政府は満足しているようだという。ただしフィナンシャル・タイムズ紙は、イスラム過激派にどの程度の打撃を与えられたかは依然不明であるとしている。同紙によると、戦闘が開始された直後から、仏軍の空爆に耐えて陣地を守るよりも、退却という戦術をイスラム過激派が選択したからだという。このことは、イスラム過激派がフランスを長期戦に引きずり込むと宣言している(同紙)という事実に符牒する。
【支援をためらう米国の思惑とは?】
米国の対仏空中給油支援についてウォール・ストリート・ジャーナル紙は、これまでオバマ政権が、アフリカにおける終わりの見えないイスラム過激派との軍事衝突に関与することを躊躇してきた経緯があるだけに、一線を踏み越えた決断を下したと報じている。
さらに同紙は、米軍および情報機関の高官が、アフリカへの関与を深める計画を策定中であると報じている。その計画とは、マリにおけるイスラム過激派組織の位置を特定する情報を仏軍に提供することであるという。ただし、米国内では二つの意見に分かれているという。一つは、標的情報を仏軍に提供することによって、フランスの軍事作戦という性質が変化する危険性があるとする反対論である。もう一方の賛成論は、情報を提供することによって、西側にとって脅威であるテロリストを根絶することができるとともに、フランスが泥沼の戦争に引きずり込まれることを阻止できるというものだ。
ただし、同紙によると、オバマ政権が支援に二の足を踏んできたのは、ターゲットが誰であるのか、どのようにしてアフリカ諸国軍に主導権を移譲するのかということについてフランスの作戦計画が不明瞭であったため(米高官)でもあるという。このあたりの事情は、先日の記事(フランス、マリのアルカイダ空爆 それでも苦戦の理由とは)で紹介されたフィナンシャル・タイムズ紙の報道と相似をなしている。