ケリー新国務長官、無難なスタート 日本については触れず
24日、米国の次期国務長官に予定されているジョン・ケリー上院外交委員長が、委員会で政策方針についての質問を受けた。大統領候補でもあったケリー氏の信任は確実視されており、外交委員が直接国務長官に昇任するのは1897年以来となる。なおケリー氏は日本について言及しなかった。
ケリー氏は「外交政策は無人偵察機やその配置だけで決まるものではない」「外交政策とは経済政策」などと述べた。オバマ大統領の路線に従い、武力行使よりも外交努力や経済関係(米国内の財政問題解決を含め)を重視する姿勢を見せた。ただし、イランの核開発問題については、最終的に武力行使の可能性をも含め、なんとしても解決を図ることで大統領と合意しているという。ケリー氏は冷戦後の多極化世界を論じたヘンリー・キッシンジャー氏の著作を引用するなどして、アメリカ絶対優位の時代の終わりを示唆し、ロシア、パキスタン、エジプト、ベネズエラ等々、各国との関係深化を訴えている。
委員会では共和党・民主党どちらからも手厳しい質問は少なく、全体に和やかなムードであり、ケリー氏はクリントン現国務長官や、やはり元大統領候補でありベトナム戦争の戦友である共和党マケイン議員からの支持を受けたという。しかし委員会では、前日にクリントン氏が昨年のリビア・ベンガジでの米領事館襲撃事件について追求されており、ケリー氏もオバマ政権や国務省の事件対応(警備体制の不備など)について、長官就任後の調査断行を求められた。
また、シリア情勢を憂慮し反乱勢力への武器供与などを主張しているマケイン氏も、ケリー氏のシリア政策に物足りなさを感じているようであったという。ニューヨーク・タイムズ紙は、「4時間近いヒアリングで、ケリー氏は広範な問題への知識を誇示したが、厄介な外交政策上の問題を前進させる方法について、新しいアイデアを提示はしなかった」と評している。
なおフィナンシャル・タイムズ紙は、ケリー氏の空席を埋めるマサチューセッツ州上院議員補選についても触れた。オバマ大統領はこの州で61%の票を獲得しているが、共和党のブラウン候補も強力であり、民主党は低投票率による不利を懸念して夏の選挙は回避したがっているという。