イスラエル総選挙、新たな風は吹くか?
イスラエル総選挙が22日に行われた。地元メディアの出口調査によると、ネタニヤフ首相率いる与党リクードと極右政党「わが家イスラエル」の統一会派は、国会定数120のうち31議席を確保する見通し。解散前から議席を11減らすものの、第1党の座は維持する見通しだ。ネタニヤフ首相は23日に勝利 演説を行い、イランの核武装阻止が新政権の最優先課題になると述べた。
海外各紙は、揺れ動く有権者たちの思いや、新しい時代の兆しとも言える立候補者らの動きに注目して報道している。
【総選挙は国民の目には茶番劇?】
ニューヨーク・タイムズ紙は、人々は不透明で解決策のない政治の動きよりも実生活の中で抱える社会的価値や家計などの目先の事柄を重要視していると述べた。ネタニヤフ首相は財政赤字や行き詰まった和平プロセス、政治家たちの汚職問題など山積みの問題を抱えているにも関わらず3期目の当選がほぼ確実とされてきた。 選挙キャンペーンでは、これらの問題対策には触れず、「強い首相、強いイスラエル」をスローガンに、イラン核問題やパレスチナのイスラム原理主義組織ハマスへの強硬姿勢のアピールに徹していたという。同紙は、右傾化の進む政治に対し、多くのイスラエル人は「平和な国家」の実現に絶望的であり、絶望は過激な行動にも繋がりかねない危ない状況である、と報じた。大多数の有権者がどの党を支持すべきか決めかねている状況は「事実を塞いでいる絆創膏」であり、「茶番劇のようだ」と語る声を取り上げた。
【新しい時代の兆し】
ニューヨーク・タイムズ紙は、新しい国会構成にイスラエルの今後が象徴されるだろうと報じている。定数である120席中、40−50席が新しい議員になる見通しで、その大半がパレスチナ自治区ヨルダン川西岸に住むユダヤ教正統派だという。新国会は過激派の占める割合が増え、アイデンティティに焦点を当てた活動が強くなり、各地域が存続するだけではなく自治権を欲してくるという見解を取り上げている。
また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、若き億万長者ナフタリー・ベネット氏が率いる右派政党「ユダヤ人の家」が宗教に関心の薄い若者たちを中心に人気を集め、急速に勢いを増してきたと報じている。同氏は、これまでのイスラエルの平和に向けた試みは失敗であると主張し、パレスチナとの二国間和平交渉ではなく、西岸地区の併合が必要だと訴えている。他にも、ユダヤ教正統派のエラゼル・スターン議員やダニー・ダノン議員など、併合を支持する動きが高まっている。こうした運動は、以前は保守的な活動として捉えられてきたが、最近ではパイオニア的なものとして考えられるようになってきたなど、イスラエル社会におけるエリート層の意識に変化が起きていると指摘し、新たな時代の幕開けの兆しだと報じた。