アルジェリア人質事件が各国に与えた影響とは?
アルジェリアのセラル首相は、21日、天然ガス関連施設における人質事件で、現段階で判明しているだけでも、37名が犠牲になり、5名が行方不明であることを明らかにした。菅官房長官は同日、日本人7名の遺体が確認されたと発表した。
海外各紙は、同事件が各国に与えた影響を詳しく論じている。
【日本は防衛力増強へ】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、日本が防衛力を増強する方向へ向かうと予測している。同紙は、日本の置かれている状況として、以下の4点を指摘している。
(1) 日本の製造業の海外売上高比率が2012年度36%に上ると予測されること(10年前は28%)
(2) 今回の事件による犠牲者数が2001年9月11日の米同時多発テロ事件(日本人犠牲者数24人)以降、最大となったこと(同紙は、日本が今回の事件で最大の犠牲者数を出した国であるとしている)
(3) 中国および北朝鮮と緊張関係にあること
(4) 第二次大戦の苦い敗戦以降、アメリカの傘下として守られ、自衛隊の海外派遣に法的制約(自衛隊法)があること
その上で同紙は、政権に返り咲いたナショナリストの安倍首相が、自衛隊を国防軍という名称に変え、10年振りに防衛予算を増額させようとしている意向であると報じるとともに、安倍氏がアルジェリア人質事件と中国との国境論争を理由に、これらの方向性を正当化しているように見えると評している。
【予期されていた危機と米国の今後】
ニューヨーク・タイムズ紙は、昨年の時点でもマリのイスラム過激派の存在により、アルジェリアの石油複合施設におけるリスクは高まっていたと報じている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、アルジェリア政府は、フランスのマリ軍事介入後にマリ・アルジェリア間の国境を封鎖すると述べていたが、今回の事件によって、イスラム過激派が国境間を容易に移動できることがはっきりしたという。)ニューヨーク・タイムズ紙は、フランスと米国が数カ月前からアルジェリア政府に対してイスラム過激派掃討の協力を要請してきたにもかかわらず、今回の事件が起きたために米国を驚かせ、新たな対策の構築が必要になったとしている。同紙は、さらに、北アフリカで主要なテロリストグループである「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」が国境付近で勢力を伸長させているため、米国とその同盟国(欧州およびアフリカ諸国)は、慎重に同地域における戦略を練る必要があるとする元米国防総省対テロ高官の見方を報じている。