なぜアルジェリア人質事件は起きたのか?
16日、北アフリカのアルジェリア南東部にある天然ガス関連施設で、日本人を含む約40人がアルカイダ系武装組織の人質に取られた。人質の正確な人数は依然不明だが、その国籍には、アルジェリア以外に米国、英国、アイルランド、ノルウェーが挙げられている。なお、イスラム過激派「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」が、アルジェリアの報道機関に犯行声明を出している。
海外各紙は、人質事件の背景と今後の見通しについて詳報している。
【事件の要因1 フランスのマリ軍事介入】
フィナンシャル・タイムズ紙によると、事件を誘発したのは、フランスによるマリへの軍事介入だという。アルジェリアに国境を接するマリは、その北部がイスラム過激派「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」(AQIM)に支配されている。マリ政府から要請を受けた旧宗主国フランスがAQIMの南進を阻止するために、14日から北部地域の空爆を開始しており、今回の人質事件はそれに対する報復だと同紙は見ている。ニューヨーク・タイムズ紙も、今回の事件をアルジェリアに対する報復とするAQIMの主張を掲載している。それによると、フランス空軍がマリ北部地域空爆のためにアルジェリア領空を通過することを認めたことに対する報復行為であるという。
ただし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、フランス政府はフランス人人質の有無を確認できていないとしている。
また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、南下を阻止されたAQIMが北進してアルジェリアに流れてくるのは自明であるとする見方(アルジェリア政府系の民族解放戦線幹部)を紹介している。
【事件の要因2 資金としての人質】
ニューヨーク・タイムズ紙は、過激派組織の資金のかなりの部分が身代金によって賄われていると報じている。近年は、西アフリカの砂漠地帯で誘拐が頻発しているという。この点に関してウォール・ストリート・ジャーナル紙は、アルカイダ系組織が米国人を人質に取ることはまれであり、これまで比較的弱小と見られてきたAQIMに大きな変化があったとの見方を取り上げている。このことを裏付けるかのように、ニューヨーク・タイムズ紙は、本事件の実行犯が重装備であったと報じている。
【事件の見通し】
ニューヨーク・タイムズ紙は、米国防長官が米軍による軍事作戦の可能性について述べたと報じている。他方、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、アルジェリアが米国の軍事作戦による人質救出に抵抗を示すであろうとする前CIAアナリストの見方を紹介している。また同紙は、アルジェリアが長年イスラム過激派と戦ってきた経緯があり、テロリストの要求を受け入れ、交渉に応じるとは考えられないとする見方を紹介している。