米民主党「三位一体の銃規制運動」は、反発を乗り越えられるのか?
今週、オバマ政権は公約である銃規制の厳格化に向けて具体的に動き出すという。消息筋によれば、先月コネティカット州の小学校で起きた銃乱射事件を受け、大統領から再発防止対策チームの指揮を任じられたバイデン副大統領が、水曜に銃犯罪の被害者団体らと、木曜にNRA(全米ライフル協会)を含む銃所持者の団体と会談する。このほか、エンタテイメント業界やビデオゲーム業界の代表とも話し合う予定という。さらにダンカン教育長官は親や教師の団体と、セベリウス保健福祉長官はメンタル・ヘルスや障害者の擁護団体とそれぞれ面談するという。
いよいよ銃規制に向け本腰の姿勢を示すオバマ大統領。しかし「アメリカで最もセンシティブな問題」の一つである銃規制には、銃所持者団体はもちろん、巷にも反発の声が根強い。(自衛のための)武器所持権を謳う「憲法修正第二条」を錦の御旗とする反対論者を納得させる規制案の創出は果たして可能なのか。海外各紙は、反発勢力の動向、2011年1月8日にツーソンでの銃撃事件で重症を負ったギフォーズ元下院議員夫妻の規制推進運動、強力な銃規制論者である民主党のペロシ下院院内総務の見地について紹介した。
フィナンシャル・タイムズによれば、皮肉にも、銃規制の本格化と足並みを揃えて、入手が不可能になることを恐れる人々の駆け込み需要が激増し、現在、銃の売上は伸びる一方だという。銃の権利擁護団体や保守派団体などはこれに勢いを得て、オバマ氏の2期目の大統領就任式の2日前にあたる19日に「銃感謝デー」の開催を予定。全国民に対し、銃販売店や射撃場に集まり「銃武装する権利への支持を示す」よう、呼びかけているという。
一方、銃規制への強力な推進力を発揮しているのが、2年前に頭部を貫通する銃弾を浴び、命こそとりとめたものの、今なおリハビリの過程にあるギフォーズ元議員だ。同夫妻は、8日、銃規制強化に向けた政治活動委員会(PAC)を設立。資金を募り、運動を広げることで、NRAなど、潤沢な資金を武器に議会に銃規制反対の圧力をかけるロビー団体に対抗していくとした。
ただし、「意味ある行動」を強く求めるギフォーズ氏も、「銃の所持」そのものに反対しているわけではない。自身の銃所持を認めた上で、「法律に責任ある変化を加え、責任ある銃の所持による銃犯罪の減少」を目指すとし、銃所持者団体との融和を求めていく模様だ。
この点においては、事件前、ギフォーズ氏の銃規制に対する甘いスタンスを厳しく糾弾した民主党幹部のペロシ氏も、大容量の弾薬装填装置への規制を党として進めていくとしつつ、今、議論すべきは単なる銃規制ではなく「銃犯罪予防」という、より広い視点だとしていると、ニューヨーク・タイムズ紙は報じた。同氏は、議会で銃規制を進めることの難しさを熟知しつつ、コネティカットの乱射事件を受けた「世論」が議会を動かすことに期待を寄せているという。
オバマ政権幹部、共和党が多数を占める下院におけるペロシ院内総務、在野で大きな影響力を発揮するギフォーズ元議員。今後、民主党の規制推進派がどれほど、銃社会アメリカの世論を動かし、どのように反対派との融和点を見出していくのかが注目される。