党幹部がメディアへ異例の介入 習近平は「黙殺」か、「改革姿勢アピール」か?
中国で新年に発行された記事のうち、政治体制改革や報道の自由を謳った媒体に対する政府の介入措置が問題となり、記者らが抗議活動を展開している。海外各紙は発足したばかりの習近平体制の対応に注目しながら、エスカレートする状況を追っている。
政府が介入したとして問題になっているのは、南部・広東省を拠点とし、政治問題に関する独自取材が都市部の若年層に人気の週刊紙「南方週末」と、改革志向の論調がシニア世代やリベラル層に人気の中国誌「炎黄春秋」だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、南方週末は年明けの社説で、中国が目指すべき「夢」を題材に、憲法に基づく政治改革や民主化、自由の必要性などを訴える原稿を用意していた。しかし、無断で習近平氏の中国の現状を肯定する発言に沿った「中華民族の偉大な復興の実現こそが、最も偉大な夢」であるという内容に書き換えられたという。編集部の抗議書簡では、「デスク、記者が休暇に入りまったく事情が知らない情況で、広東省共産党委員会宣伝部の関係者の指示の下、新年号は多くの修正、記事の撤回がなされた」という。怒りを露わにする記者らは、指示を出したとされる広東省宣伝部長・庹震氏の退任を求める運動を展開している。
また、 炎黄春秋は1月号で「中国憲法は政治体制改革の共通認識」という記事で、改革が実現されないのは政治的能力の不足だと掲載したが、その後媒体のウェブサイトが突然閉鎖された。中国政府当局による措置だという見方が濃厚だとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。中国ではこれまでも報道やネット規制が問題視されてきているが、今回の出来事は異例とも言えるほどに大胆な介入だという。
SNSなどの普及により、インターネット上では厳しい検閲をすり抜けて様々な意見が発信できるようになってきた。 サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙(香港)では、ツイッターの投稿を常時アップデートしてこの騒動に関する生の声を「中継」している。
こうした中、習近平氏がどのように対応していくかが注目される。ニューヨーク・タイムズ紙によると、今回の措置は旧体制の支配的な考えを持った官僚が行ったもので、3月頃に新体制による運営が開始されれば変化が起こるのでは、と期待を寄せる声もあるようだ。しかしながら、報道規制に関して習氏が明確な方針を立てていないために今回の騒動が起こったとも述べ、今後もその本質は変わらないのでは、という悲観的な見方もあるようだ。
なお、中国政府は報道の検閲はおこなっていないと述べているが、国境なき記者団が発表した2011−2012年度の報道の自由に関する国別ランキングでは、中国は179カ国中174位だった。