ポルトガル、大統領が自党政権の予算案に反旗?
ポルトガルのカバコシルバ大統領は、支出削減や増税を含む2013年予算案に署名した。しかし大統領は、憲法裁判所に予算案の憲法判断を委託。同じ社会民主党の現党首であり緊縮財政を進めるパソスコエリョ首相との関係緊張が予想されている。
2013年予算は、伝統的に14ヶ月分相当である公務員給与の1ヶ月分削減、月1350ユーロ以上の年金への「連帯税」の追加、所得税30%増といった内容を含み、増税43億ユーロ・支出削減10億ユーロを狙っている。ヨーロッパ(欧州委員会・欧州中央銀行・国際通貨基金の「トロイカ」体制)から780億ユーロの支援を受けるため、2012年にはGDPの5%だったと推定されている財政赤字を、4.5%まで削減するのが目標である。
しかし大統領は、1日の演説でこれを批判した。大統領は「景気後退のスパイラル」を止めるための緊急行動を呼びかけ、現在のコースでは「社会的に持続不可能」になると示唆。外国の債権者の利益だけでなくポルトガルの人々への関心をも含む政策を設定しないかぎり、危機からは逃れられないとトロイカに警告した。また「犠牲の分布が正当かどうかについて、十分な根拠付きの疑問があります」と、負担の公平性への懸念を明らかにした。
高福祉国であったポルトガルでは昨年7月にも、公務員給与の2ヶ月分削減案に違憲判断を下されている。今回の予算案は削減量を減らした分、国民全体により広く負担を配分する形にしたものだ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、今回また違憲判断が下されたとしても政権は緊縮路線を捨てず、法案に簡単な手直しをするだけとの専門家の見方を伝えている。またフィナンシャル・タイムズ紙は、大統領は予算案を拒否しなかったことで決定的対立を避けたとも解説している。しかし野党は、大統領の姿勢は首相の緊縮路線が「深く孤立」している証拠だと責め立てており、もし実際に違憲判断が下されればさらに格好の攻撃材料であって、政権は危地に近付いたと言えそうだ。