ロシア、養子問題をめぐりアメリカと対決か?
この法案は養子への虐待防止策という位置づけである。しかし実際のところ、人権侵害が疑われるロシア人に対しビザの拒否や資産凍結を決めたアメリカの新法、「マグニツキー法」への感情的報復という様相を呈している。フィナンシャル・タイムズ紙は「ロシアのナショナリストたちは、外国との養子縁組を第三世界のレッテル、国家屈辱のマークとしてみなしている」と伝えた。ニューヨーク・タイムズ紙は、同様の措置で対抗しようにも、アメリカ人はあまりロシアを旅行せず、ロシアに資産を置いてもいないという事実に、政府はいらだっていると伝えた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ロシア人の56%が縁組禁止を支持し、特に高齢で教育水準の低い地方のロシア人(プーチン大統領の主な支持層とされる)の間で強力な支持があるとの世論調査結果を伝えた。
一方でエリート層の間では批判が根強く、閣僚さえも公然と反対を表明しており、ロシア社会の分裂を浮き彫りにしている。各紙がいくつか紹介する反対意見は、ロシアの孤児の多さとサポート体制の貧弱さを挙げて、事実ロシアに留まる方が危険なのであり、受け入れ先家庭も見つかりにくい、とするものである。フィナンシャル・タイムズ紙は「いまだかつて、ロシアは利益を守るために子供を利用したことはありません・・・チェチェンのテロリストは、1995年に女性や子供を人間の盾として使っていますが。」「この決定で我々は、ロシアをテロリストや武装勢力と同レベルに置いてしまったのです」との、ロシア下院の女性議員の言葉を紹介した。ニューヨーク・タイムズ紙は米国アトランタ郊外に住むロシア養子の幸福そうな様子を強調し、ロシアから兄弟を迎えてやろうとしているが諦めざるを得ないかも知れないとの、養母の言葉を紹介した。
なおロシア上院も、国内の養子政策についての現状は認め、緊急措置が必要との声明を同時に決議している。