なぜシリアで内戦が長引くのか?
内戦が続くシリアでは、次第に、反体制派の包囲網が狭まっている。双方の攻撃が激化し、23日には、ハマの郊外で大勢の市民が行列を作っていたパン屋が戦闘機による爆撃を受け、100人近い死者が出た。事件について、政府も、反体制派も、互いに責任をなすりつけあう混迷の最中、国連とアラブ連盟の特使を務めるブラヒミ氏がアサド大統領と会談。シリアに反政府勢力も参加する暫定政権を作り、段階的な政権の移行を目指す案を検討しているとみられるものの、体制側も反体制派も歩み寄らず、具体的な停戦への道は見出されていない。
海外各紙は、それぞれ、追い詰められる現体制、体制崩壊の巻き添えに遭うキリスト教徒、秘密のベールに包まれたアサド大統領の人柄に焦点を当てた。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、現在の戦況を、反体制派が各都市を結ぶ重要拠点を次々と掌握していると報道。トルコとの国境沿いの体制派の町も、重大な陸路拠点もすでに制圧し、体制派はすでに、航空機を使わなければ物資の補給もままならないとした。しかも、アレッポの国際空港すら反体制派の手に落ち、体制派は制空権すら失いつつあるとして、現体制の八方塞がりの状況を伝えた。
こうして現体制の牙城がじわじわと崩れていくなか、シリア国民の10%といわれるキリスト教徒が、心ならずも崩壊に巻き込まれているとCNNが報じた。キリスト教徒は、シリアにおいて、アサド大統領が属するイスラム教アラウィー派ともども、少数派に属する。大多数であるスンニ派を制する一助として、大統領に庇護されてきた歴史が仇となり、現在、反体制派に敵視され、迫害の憂き目に遭っているという。もともと、どちらに与するという意図はないにもかかわらず、反体制派の暴力から身を守るために武器を取る者もおり、今後、反体制派が力を伸ばしていくにつれて、運命が危ぶまれるという。
一方、ニューヨーク・タイムズ紙は、祖国を悲劇に導いた「独裁者」、アサド大統領の「今」に思いを巡らせた。そもそも、近しい関係者から「物静か」とも評されるアサド大統領が、初期の、「平和的な抗議」の段階で内戦の芽を摘むことができず、改革や協議を勧める盟友、トルコやハマスにも耳を貸さなかったのはなぜなのか。それを阻んだのはおそらく、母親や、父親の置き土産である旧体制の側近や情報局員であることが示唆された。頼りの身内は、あるいは国外に逃れ、あるいは戦死し、あるいは重症を負いながら戦い続けている。孤立するアサド大統領に、降伏や逃亡を説得できるとしたら、夫人だとも言われるが、その動向も定かではない。しかも、もともと少数派のアラウィー派に属し、無残な復讐を恐れて遮二無二攻撃を激化させる側近にとって、武力行使の切り札である大統領は、手放すわけにはいかない存在だという。
もはや、独裁体制を敷き、敵対勢力を容赦なく殲滅した父親の足跡を辿り、それを凌駕する死人の山を築きながら破滅にひた走るほかない大統領の孤独が浮き彫りにされた。