エジプト新憲法承認か-それでも波乱含みな理由
エジプトでは日曜日、新憲法の是非を問う2回目の国民投票が行われ、賛成多数での承認が確実な見込みとなった。ムスリム同胞団の発表によれば、全体での賛成票は64%。リベラル層が充実した都市部での第1回目の投票で57%、保守勢力が圧倒的多数の地方部での第2回投票で70%という結果だったという。
大統領支持派はこの結果を「エジプトの民主主義が新たな一歩を踏み出した」と評価したが、世俗勢力中心の反モルシ派は、不正の追求をはじめ、未だ徹底抗戦の構えを崩していないという。
海外各紙は、新憲法の問題点をはじめとする反対派の主張に焦点を当て、エジプトの今後を占った。
ニューヨーク・タイムズ紙によれば、反対派の「今回の選挙がそもそも不正により無効だ」という主張については、透明の箱を使い、第三者が監視するなかで行われたことから、無効と判断される見込みは低いという。これについては反対派も半ば諦めている格好で、むしろ、投票率が30%と低く、賛成と反対の差が当初の予想よりははるかに小さかった今回の結果を、「反モルシ」の民意の表れとし、反対派にとっては一種の勝利であるとして、この勢いを近く行われる議会選挙に持ち越すと意気込む声もあるという。
とはいえ、憲法の内容に対する不満の声がとどまる気配はない。フィナンシャル・タイムズ紙によれば、任期を2期までに限定するなど大統領の権限制限などの評価点もあるというが、国際的な研究者からは、軍への文民統制が及ばない点、権力の集中、上院と下院との関係の不透明性などの問題が指摘されているという。
さらに、イスラム色の強さを危ぶむ声が依然として強い。特に問題は、従来通りの『イスラム法を立法の主なよりどころとする』という規定のほか、新たに追加された、『イスラム法はイスラム学者の解釈を含む』と記されている219条で、法律がイスラム学者の解釈に委ねられかねない危険が、リベラル派やキリスト教徒の不安を煽っているという。
この、「エジプトのイスラム化」に対し、最も警戒感と不安を募らせているのは国民の10%を占めるキリスト教徒だ、として焦点を当てたのはウォール・ストリート・ジャーナル紙。同紙は、コプト教徒を中心とするキリスト教徒が、従来政治問題に無関心だったのにもかかわらず、「ムバラクのシンパ」というレッテルを貼られたことで、弾圧の不安に怯えている現状を伝えた。選挙でも、「名簿に名前がなかった」「投票所に行く邪魔をされた」などの声も上がり、不安から棄権を選んだ者も多く、土俵にすら上がれずに蚊帳の外に置かれた格好だったとされた。「近い将来、深刻な暴力が襲う」ことを危惧する声さえあるという。
総じて、「この憲法には、「憲法」にもっとも重要な要素、「コンセンサス」が欠けている。この上に、国の将来を築くことはできない」という反対派の主張を鮮やかに浮き彫りにする報道となった。